印刷版   

浙江省のガラス工場(China Photos/Getty Images)

過剰生産:中国国内の「中国産」問題

 【大紀元日本12月27日】中国北部の内モンゴル自治区に本拠を置く包頭鉄鋼集団有限公司にとっては、今年は辛い一年であった。収益が21%落ち込み、10年前に上場して以来初めての損失を出した。世界の需要の落ち込みに加え、国内生産が今年10・5%伸びたことが主な原因だ。中国では今年7億トン超の鉄鋼が生産され、国内需要を2億トン上回っている。「産能過剰」(生産能力過剰)問題は中国の鉄鋼業のほとんどの企業に大きく影響していると同集団投資関係者は話す。

 世界を驚かせた4兆元の国内投資。表面的には、GDP成長を記録したが、その反面、国内では余剰生産された資材を捌くことができず、大手企業が苦境に立たされている。10日のBusinessWeek誌がその問題を伝えている。

 過剰生産を生み出す景気刺激策

 経済悪化の危機から抜け出すために、中国当局は景気刺激策として、昨年末に4兆元(50数億円)の投資計画を打ち出した。多くは、工場、高速道路などの大型プロジェクトに充てられ、固定資産の投資は上半期に40%の成長をみせ、GDP成長のほとんどを占めた。

 これらのプロジェクトが、鉄鋼、化学薬品、ガラスの需要の上昇につながり、景気を刺激するところまでは問題がなかった。しかし、人工的な多額市場投資のため、生産者側は低下する需要の幅が読み取れず、生産を増加していくため、資材過剰の問題が深刻化している。セメントは、既に生産された19億トンに、年間6億トンが上乗せされている状態だ。

 過剰設備も深刻で、アルミニウム精錬所は、昨年、ほぼ80%の稼働率だったが、今年は65%程度に抑えられている。風力発電用の機器を製造する企業は、ここ2年で4倍に増加し、80社となった。

 鉄鋼の生産量は、国内需要を30%上回る。工場を閉鎖して従業員を首にするか、余剰分を輸出するか迫られるところだ。米国Nucor社(NUE)の最高経営責任者ダニエル・ディミコ氏は取材に、「中国は輸出の方に傾いている」と指摘する。

 欧米との貿易摩擦

 米国政府は今年に入ってから、中国に対して既に14件の反ダンピング、反補助金関連調査を実施した。予備判決で中国産の油井管がダンピングされているとされ、米商務省は、中国産の油井管と関連商品に対して、反ダンピング税を導入。これによって米国への輸出価格がほぼ2倍になる。「世界にこれ以上の需要がないのに、中国は生産量を増やし続けている。ここ3年間で中国の油井管の対米輸出量は、3倍になり、年間210万トンを超えてきた。判決後、この波はようやく治まってきた。

 中国駐在の欧州商工会議所所長ジョエルグ・ウトク(Joerg Wuttke)氏は、「世界が中国の余剰分を購入できる時はよかった。しかし、今は違う。圧力鍋の蒸気がすごい勢いで出てきているようなものだ」と語る。同会議所では、先月26日、中国の過剰設備に関する報告書を発表。貿易摩擦が今後悪化していくことを予測している。

 中国政府の対応

 資材生産への過剰投資は、中国の取るべき道ではない。「薄利多売か、付加価値製品か。経済が依存すべきものについて考える必要がある」と北京大学国際関係学院の査道炯(チャ・ダオジョン)教授は提起する。

 中国当局もそれなりに、生産の制限をはかっている。 セメント、アルミニウム、ガラス製造業界で、 厳格な汚染管理基準、エネルギー効果性、規模の要請を満たさないプロジェクトには、制限がかかる。

 実際、上海宝山鋼鉄と武漢鋼鉄は、各々が年間1000万トンを生産する工場二つの立ち上げに待ったをかけた。また、太陽電池に使われるポリシリコンとスキンローションから電子機器まであらゆるものに用いられるシリコーンモノマーを製造する小規模工場の建設を中止させた。

 しかし、中共政権は、国家経済の体制を緩める気配はない。12月7日に開催された恒例の政策決定会議では、成長を刺激するための国家投資を、最低1年は続けることが示唆された。人民元の切り上げに対しても消極的だった。

 余剰生産が売り捌けなければ、貸付返済不能のリスクが待ちかまえている。中国が、国営の経済指向から、消費者主導経済に転換しなければ、真の経済成長は見込めない。

(編集・鶴田)


 (09/12/27 08:44)  





■関連文章
  • 米中貿易摩擦:オバマ訪中を控え、ハイレベル協議(09/11/05)
  • ドイツの6割企業、中国への投資を中止=独紙(09/10/06)
  • 「秒速5センチメートル」に酷似 中国制作側:構図が似てもストーリーが違う(09/09/11)
  • EU商工会議所会長 「中国当局は、外資系企業への規制を強化」(09/09/10)
  • チベット爆発事件:国営新華社が速報、世論コントロール狙い(09/03/11)
  • 世界金融危機で、香港百万長者16%減(09/02/22)
  • 国際経済学者:中国のGDP伸び率はほぼ0%近い、政府は中国経済の実態を隠蔽(09/02/19)
  • 全面的に悪化する中国経済、成長モデルの維持は困難(09/02/10)
  • 中央テレビ局:建設中新ビルで大火災、報道を厳しく規制=北京市(09/02/09)
  • 中国広東省:相次ぐ倒産の波、緊急事態に(08/11/14)
  • 世界金融危機による中国への影響(08/10/23)
  • 世界金融危機の直撃を免れたカナダ(08/10/19)
  • 中国湖南・長沙:労働者数千人、座り込み抗議(08/04/13)
  • 米国の反ダンピング制度に対する日本の報復措置で、WTOの仲裁手続き入り(08/01/22)
  • 米上院銀行委員会、人民元改革促す法案を可決(07/08/02)