THE EPOCH TIMES

西南部大干ばつ 6ヶ月も遅れた対応・持続不可能の水利政策=中国国土計画専門家にインタビュー(一)

2010年04月05日 07時52分
 【大紀元日本4月5日】森林被覆比率50%以上、全国の水資源の70%を占める中国西南部5省。中国の水資源分配において、常に南部では洪水、北部では干ばつという「南涝北旱」の特徴だった。かつて「空気から水が取れる」ほど豊富な水資源の中国西南部は、現在土地は枯れて作物が育たず、水運航行も絶たれ、ダムは干上がる。飲み水さえもなく土地を離れた農民は百万人以上にも上るという。

 09年7月以来、中国西南地区では百年に一度といわれる干ばつが続いている。今春も温度が高く雨の少ない天気が続き、中国西南地区5省市区の干ばつによる被害人口は5千万人に達した。また2千万人の飲用水確保が困難で、特に雲南、貴州が深刻な状態だ。

 原生林が豊富で天候がずっと順調だった中国西南部5省は、なぜ今回、このように深刻な干ばつに見舞われたのか。昨年7月に発生したこの干ばつ問題が、なぜ今年3月まで取り上げられなかったのか。ダムが数多く建設されているのに、なぜ飲用水さえ保障されないのか。このような局面を救う手立てはないのか。中国国土計画専門家で、『三峡工程36計』の著者である王維洛氏(現在ドイツ在住)が今回の干ばつに至った原因と現状、中国政府の水利政策などについて、記者の疑問に答えた。

 王氏がインタビューに答えた要点を、3回に分けて紹介する。

 6ヶ月も遅れた救済の対応 その原因

 今年の西南部の大干ばつは、報道に照らし合わせれば、昨年7月から始まっていることになっている。半年以上時間が経ち、やっと干ばつについて語り始めたのだ。09年春にも、中国の北部では大干ばつが発生したが、政府の動き出した時間は、今年は昨年春の干ばつに比べると遅く、等級も低いものが多い。現在まで抗旱防洪指揮部もレッドシグナルを発令せず、その数日前になって胡錦涛国家主席がやっと軍隊に旱害防止へ入るよう指示している。

 なぜ政府の反応が今年はこれほどまでに遅いのか、なぜ昨年はあれほど迅速にレッドシグナルを発令したのか。

 09年春、2月から華北16省市で大干ばつが始まった。2月4日、国家抗旱防洪総指揮部が干ばつ二級レッドシグナルを発令した。翌日には一級に変わった。これは政権以来中国初の最高干ばつ警報だった。一級レベルの警報は、干ばつ地区が全面的に厳戒状態に入ったことを意味する。つまり、国家抗旱防洪総指揮部は、干ばつ防止にとって必要な人力や設備を動かす権限を与えられ、各地方や部省などそれに従わなければならず、従わなければ免職などの処罰を受ける可能性がある。

 09年の大干ばつの3か月後、中央政府は干ばつ防止に絶対的措置を敷いた。最も厳しい手段である干ばつ一級レッドシグナルを採ったのは、当時の状況を見ての対応だった。

 当時、干ばつの発生は旧正月前で、3千万人以上の出稼ぎ農工が仕事が無く帰郷していた。また「六四事件」20周年、「法輪功(ファールンゴン)」迫害10周年などが重なり、多くの人が不安定な1年になると予測していた。両会開催前のタイミングでもあった。目的は両会前の局勢をコントロールし、影響が出ないようにすることにあった。もし両会期間中に干ばつ報道が多く出されれば、両会の議題が干ばつと中国環境問題、中国の農民問題等に移ってしまうからである。

 今年の干ばつの被害状況を見ると、昨年に比べ深刻で損失も大きい。雲南省を例に挙げれば、毎週20億元の損失が発生している。しかし政府が動き出したのは6カ月後で、昨年よりずっと遅く、投入資金も昨年の半分しかない。昨年の国家充当費3億元に対し、今年は現時点で1・6億元にとどまっている。その原因は今年の状況は昨年とは異なり、政治上大きな措置を採らなければならないことが無いことだと思う。

 政治的需要で災害レベルを判断

 私がここで言いたいのは、今年、中国政府が年末報告を発表する時を待つということだ。きっと昨年と同じように、干ばつがあっても、食糧収穫は大豊作の報告になると思う。

 09年春の干ばつの時に、ダムの底が見え、春小麦に撒く水は無く、農民たちの飲み水もない、牛も干上がったダム底で食べる物が無い等、干ばつの状況が非常に深刻であった。しかし、結果はどうか。あまり人々に気付かされていないが、09年10月になると、農業部と国務院がその年の食糧収穫は大豊作だったと発表した。

 当時、16の省市では少なくとも一期の食糧の収穫が全くなかった。なぜかというと、小麦の収穫が全くない状態でならなければ、レッドシグナルは発令されない。北方地区では二期作だが、春の収穫が全く無かったにもかかわらず、報告には食糧は大豊作と記載され、まるでその年に干ばつはなかったかのようだ。とにかく、この食糧大豊作の報告にあるデータは間違いなく正しくなかったのだ。

 この点から言えば中国政府は旱害、水害によってどんな状況が発生しても、災害状況のレベルを決めるのは、災害の深刻さではなく、政治上の需要で決めており、完全に政治上の考慮によるものなのだ。

 8万か所のダムは貯水していない

 共産党中国政権の成立以来、8万か所以上のダムが建設されている。しかし、昨年、ダムは全く貯水していないため、今年ダムは干上がっている。なぜ昨年貯水しなかったのかを、中国政府は伝えていない。

 ダムを建設するたびに、その必要性をアピールするために、渇水期が来た時に使用するために増水期の6~8月にダムに貯水すると、政府が宣伝している。では、なぜせっかく建設されたダムは水を貯めないのか。

 毎年5月、中国防汛抗旱総指揮部は全国のダムに、ダムの水を全て放水するよう通達する。6月からの洪水期が来たら、貯水したままのダムが決壊してしまう可能性があるためである。中国の3分の1以上のダムは安全とは言えず、建設の質にも問題がある。いつか大きな洪水が来てダムが潰れたら誰が責任を負うのか。

 このため敢えて貯水すべき時期に貯水させないのだ。毎年5月末と6月初めに、ダムの水位を最低水位まで放水してある。洪水の時期が来る時期や、降水量が多い時に貯水することをしない。降水量の少ない9月になったら、貯水を開始する。しかし9月を過ぎたら雨は降らない。雨が降るのなら貯水も出来るが降らなければ貯水も出来ないだろう。

 これが今春、西南地区の多くのダムが空になっている原因である。つまりダムの運営において根本的問題がある。その問題は、中国のダムの質が良くないため、増水期に貯水することが出来ないところにある。これほど多く建設されたダムが使い物になっていないのだ。

 このような問題を作り出すダムの建設は一体何の目的なのか。建設時、ダムにはいろいろな機能があり、発電、貯水、水運が可能でこれも良い、あれも良いと宣伝するばかり。しかし今回雲南省での発電と用水には矛盾があるように、これらの機能の間には相互の矛盾があるということを無視しているのだ。

 (続く)

(記者・黄芩德、翻訳編集・坂本)


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