THE EPOCH TIMES

「美しい大連を取り戻す」 大連市で数万人デモ 化学工場に後ろ盾があったか 

2011年08月15日 18時16分
 【大紀元日本8月15日】「アカシアの大連」が怒った。初夏にはアカシアの甘い香りが漂い、風光明媚で知られる中国東北部の大連市は、8日の大型台風で、化学工場から毒ガスが漏れる危険にさらされた。14日、同工場の移転を求める数万人の大連市民が、市政府前の広場に集まり抗議デモを行った。

 米VOA14日付の報道は、デモは朝8時から午後5時過ぎまで行われ、3万人以上の市民が参加した、と参加者の話として伝えた。デモ隊は、市長からの直接の説明を求め、「美しい大連を返せ」という横断幕を掲げ、「福佳大化、大連から出て行け」などのスローガンを叫んでいたという。

 福佳大化、大連に忍び入る

 福佳大化(大連福佳大化石油化工有限公司)は、ポリエステル繊維などの原料となるパラキシレンを生産する企業として中国国内で最大規模を誇る。毒性の強いパラキシレンの工場建設は2004年当初、福建省アモイ市に決定されたものの、同市市民の強い反発で中止となった。そんな中、福建省から遠く離れた遼寧省大連市では、当時の夏徳仁市長の働きにより、2005年12月に建設許可を獲得し、2009年5月に密かに生産が開始された。

 10日付の国内紙・青年時報では、パラキシレン工場の建設には3つの前提が必要だと指摘する。▼事前に公開し、民意を問うこと▼住民が密集する地域から遠く離れること▼安全管理をしっかり行うこと、という。

 それに対し、大連の多くの市民は、工場が稼働し度重なる危機状況が発生するまで、その存在を知らなかった。また、世界的にパラキシレン工場の建設は市街地から100キロ離れる所とされる(南方都市報)が、福佳大化は大連市の中心部までわずか20キロの距離にあり、大連市の風上に建てられている。さらに、福佳大化が位置する化学工業団地内に、51の化学薬品タンクがあり、うち16は有毒化学品のタンクであることも知られている。これらのタンクでの事故もパラキシレン工場に波及する恐れがある。9日の南方週末は、福佳大化のパラキシレン工場はまるで大連660万市民の頭上にぶら下がる「ダモクレスの剣」だと指摘する。

 台風で剣が揺れる

 8日朝、台風9号が大連市を襲った。
8日の台風で破壊された福佳大化の防波堤(大紀元資料室) 

10時半ごろ、20メートルの大波が福佳大化の防波堤を破壊し、海水がパラキシレンを貯蔵するタンクの下まで流れ込んだ。タンクは基礎の上に置かれており、海水の勢いが強ければ、タンクが傾斜し、パラキシレンが漏れ出す事態になりかねない。

 危機が迫るなか、当局は付近住民に避難を促した。現地記者が微博(ブログ)で公開した情報によると、数万人の住民が降りしきる大雨の中、自家用車やトラック、バスなどで、工場のある大連市金州区の大孤山地区から避難を急いだ。

 同日正午、国内メディアと警察の報道部局が同工場に駆けつけ取材しようとしたところ、数十名の従業員に遮られ、殴られたという。また、午後4時半に、中国中央テレビ(CCTV)の記者と大連市政府の職員が同工場に入ると、ふたたび小競り合いとなった。

 その強気の福佳大化は、翌9日午後になって、同工場の危機は解除されたと発表した。また新華網も同日、「大連市の関連部門」の話として、福佳大化では「有毒ガス漏れが発生していない」と伝えた。一方で、国内紙・南方都市報は10日の社説で、「常識から考えると、民衆が心配するようなことが起きていなければ、福佳大化はなぜ取材を恐れ、記者を殴打し、取材用カメラまで奪おうとしたのか」と問いかけ、同工場の「安全宣言」に疑問を呈した。

 福佳大化が強気のワケ

 南方都市報の同社説では、「(民間の)記者が殴られるのはニュースにもならないが、CCTVの記者が殴打され、市政府や公安の人まで殴られるのは極めて珍しい」と指摘し、封鎖と暴力で情報隠蔽をはかる福佳大化は「横暴すぎる」と批判した。

 その横暴さは福佳大化の背景から生じていると記事は分析する。同企業は福佳集団と大化集団の合弁事業であり、どちらも大連市経済界の重鎮だという。福佳集団は同市民営企業トップ10に入っており、大化集団は中国の石油化学工業における「100強」の1つに数えられる。

 同工場では、年間70万トンのパラキシレンを生産し、生産高は260億元、納税額は20億元にも上り、国内最大規模を誇る。さらに、同事業は「大連市政府6大重点事業」の1つになっている。

 福佳大化にただならぬバックが存在することを物語ったのは、記者が殴られたCCTVが9日夜の番組「新聞1+1」が放送開始2秒前に、番組の放送中止を決定したことだ。番組の予告編はすでに流れており、大連市で最近起きた一連の重大事故に焦点を当て、その背景をさぐるといった内容だった。

 番組メインキャスターの白岩松さんは後に新浪微博で、この中止について、「理由なんてない。否応無しの中止。これは紀律だから。宣伝紀律。内心イヤでもしようがない。だって、私たちに「喉舌」というもう1つの名があるからだ」。白さんのアカウントはその後封鎖されている。

 青年時報では、大連のパラキシレン事業の背後には腐敗や権力と利の結びつきが見え隠れすると指摘する。「巨大な権力が後ろ盾になければ、彼らは大連市委副理事長の前で、区の公安局長の前で、記者をなぐる度胸があるのか」と問いかける。

 大連はかつてから江沢民派閥の領地である。現在重慶市で書記を務め、江沢民派閥の重鎮である薄煕来氏が、1992年から8年間にわたり大連市のトップに君臨した。福佳大化のパラキシレン事業を推し進めた当時の市長・夏徳仁氏はこの薄煕来氏の抜擢により大連市の市長となり、そして現在は、薄煕来氏がかつて務めていた遼寧省副書記を務めている。

 市民が立ち上がる

 「夏徳仁を処罰しろ」。14日、大連市政府前に集まった市民らがそう叫んだ。頭上にダモクレスの剣が吊るされていることが広く大連市民に知られたのは、皮肉にも、福佳大化の横暴さがきっかけだった。情報を隠そうとして、メディアの報道を阻んだ福佳大化の暴行がメディアに報道され、当事者である多くの大連市民が初めてことの深刻さを知ることとなった。

 8日の夜、微博上に「8月14日午前10時、人民広場で福佳大化に抗議を行おう」という呼び掛けが流れ、「私たちの美しい大連を取り戻そう」との願いが綴られた。この願いは多くの市民の心に響き、14日、数万人が参加するデモのスローガンにもなった。

 「美しい大連」が「危ない大連」と化したことに憤る市民を前に、大連市側が同日夕方、化学工場の即時操業停止と早期の撤去を異例の早さで約束した。しかし、具体的な日程には触れておらず、デモ参加者による「時間(いつ)」というコールに、返事がなかったという。多くの参加者は市当局の約束に疑念を抱き、来週以降も「美しい大連が取り戻せるまで」デモを続けると話している。

(張凛音)


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