激変中の中国政治情勢と日本・香港への影響(3) 

2015年05月07日 15時23分
【大紀元日本5月7日】編集者注:1989年の学生民主化運動「六四天安門事件」から今日まで、中国では一連の重大事件が発生し、未曽有の変化が起きた。しかも、それは引き続き、中国、ひいては全世界に長期でかつ強い影響をもたらしている。こうした中、中国政府は巨大市場を餌食に外交ルートを通じて、各国政府、報道機関、企業及び投資家に圧力を講じ、国際報道機関に対し、「極めて敏感な事件」の真相を伝えないよう報道自粛を迫ってきた。それにより、国際社会が中国情勢を適正に判断できず、関わり方を間違ってしまい、歴史的な機縁を失ってしまう恐れが生じている。

 今年2月18日、大紀元香港支社の郭君支社長は東京新宿の京王プラザホテルで講演会を開いた。中国情勢のキーポイントとなる問題を解説、激変を遂げる中国が日本及び香港にもたらす影響を分析した。本サイトはその講演の全文の和訳を連載する。

 以下は第三部「中国経済の特徴と未来の動向」

 ここ10年、中国の不動産価格が急上昇しました。もっとも高いのは首都の北京で、広東省の広州市と深セン市がそれに続きます。他の地区より10年も早く改革開放を実施した広東省は、外資系企業がもっとも多く、貿易輸出額が最大で、私営企業の経営者がもっとも集中しています。一方、中国の金融と貿易の中心である上海の経済発展の力ももっとも強いはずですが、不動産価格が一番高いのは北京です。

 実際のところ、北京の億万長者は中国最多で、2013年のフォーブス誌の中国富豪ランキングで上位400人のうち、58人は北京在住で、上海は37人、深セン市は34人でした。

 ここから、中国経済の主要な特徴を説明します。

 1.政治権力主導

 経済活動やその他の社会活動はすべて、政治権力を中心に展開するため、政治の中心である首都北京の富豪がもっとも多く、不動産価格が最も高く、高級幹部が集中しています。

 2.政府主導とコントロール

 中国は「社会主義の市場経済」を宣言しているが、市場は従来から政府主導下にあり、政府は絶対的な支配権を握っています。世界貿易機関(WHO)加盟時に約束を交わしたにも関わらず、依然として非関税障壁(関税以外の方法によって貿易を制限すること)を実施しています。例えば銀行の場合、支店ごとに対する審査を行うため、外国銀行が支店を設立する都度に、中国政府の審査を受けなければならないです。

 地方政府も中央を真似し、外資系企業や他の地区の国内企業に対し、差別的な政策をとります。

 実際のところ、政府が経済活動に絶対的な支配権を有するため、各階層の幹部の汚職腐敗が氾濫しました。国民の間では「汚職しない幹部を探し出すのが難しい」という見方が広まっています。

 3.輸出への依存

 過去20年間において、中国経済発展の最大の原動力は貿易輸出です。2012年、中国の貿易総額は3.8869兆ドルでGDPは8.22兆ドル。すなわち、貿易総額はGDPの47%を占めており、全世界をみても、このような国は類がありません。実際には、中国の輸出は、技術の低い加工製品が多く、その大半の原材料と部品は輸入に頼っています。それより、輸出と輸入が正比例に変動し、貿易総額を押し上げています。

 中国政府の発表では、2014年度の貿易総額は前年比2.3%増で、1978年以来最大の落ち込みです。この動向は、中国経済に決定的な影響を与える可能性があります。

 4.政府の公共投資 

 従来から政府投資主導型の経済である中国。政府投資が経済発展の行方を左右しています。2009年、4兆元(約76兆円)規模の景気刺激策を実施、2012年はさらに4兆元を追加導入、今年も引き続き公共投資を増やすことで景気を保つとみられます。このやり方は短期間で効果が現れますが、いくつかの解決し難い難題を生み出してしまいます。

  ①資効率の低下。90年代は1元の経済利益を稼ぐのに、2元の投資が必要だったが、いまは2.5倍の5元に跳ね上がりました。

 ②民間企業を圧迫。政府投資(増刷の紙幣も)はほぼ政府プロジェクトと国有企業に注入されるため、私営企業の資金調達が困難です。南部地域では多くの企業は違法な「地下銀行」の融資に頼るしかなく、その利息は最高60%に達します。

 ③インフレ圧力が強まる。特に国有機関の資金利益率が低いため、インフレに拍車をかけています。

 5.国内消費の低迷

 多くの国の国内消費の経済成長への寄与率は約70%であるのに対し、中国は長垣xun_ネ来50%に留まり、近年は40%までに低下しています。

 これは、中国経済の構造に関連しています。

 ①貧富の格差問題。経済成長の主要受益者は富裕層ですが、投資と贅沢品の消費を押し上げているだけで、消費の増加は一般国民の所得増が前提条件で、貧富の格差はその足を引っ張っています。

 ②社会保障の不足。一般家庭は、子どもの高額な教育費、老後の蓄え、医療費のほか、重くのしかかる住宅ローンを抱えており、消費を控えています。国民の高貯蓄率はこの現状を現しています。

 6.技術革新が乏しい

 中国経済は過去20年間に急激な成長を遂げましたが、実際の産業構造に大きな変化はなく、ほぼ80年代の技術レベルに停滞しています。技術革新が遅れているからです。

 技術の模倣が氾濫、多くの核心技術や主要部品は製造できず他国に頼るほかなく、もっとも典型的な実例は自動車産業です。年間1千万台の自動車生産量を誇示していますが、国産のエンジンがいまだに誕生していないのです。各主要テレビ局の人気バラエティ番組すら、米国や日本の真似をするのが多く、開発の努力を放棄しています。

 主要な原因は、技術開発者の権益が保護されないことにあります。発明や新商品が誕生すれば、早ければ数週間以内に模造品が出回り、それに対して司法は動こうとしません。

 もう一つ中国ならではの深い理由があります。共産党専制の中、情報、言論、芸術創作へのコントロールと封じ込みが厳しく、いわゆる「異見」「異なる声」が封鎖されてしまうことも、中国人の創作意欲を失くしています。

 7.経済バブル

 国内外で長く議論されてきたこの問題の象徴は不動産バブルです。中国では地区の発展が不均衡で、上海市と貴州省の平均個人所得の差は約10倍に達します。北京においては、一般労働者の平均年収は約5万元(約100万円)で、市中心部から80キロ離れた郊外の分譲マンションの1平米の価格に相当します。市内なら、0.5平米しか購入できません。

 不動産価格がこれほど高騰するのは、貧富の格差の問題や、リスクの低い投資環境がないことに関連します。富裕層の多くがもっとも安心できる不動産に投資しています。100以上の物件を保有する幹部らが相次ぎ暴露される裏には、こうした国の事情が潜んでいます。

 中国の不動産価格は2000年から10倍以上上昇し、工業、商業領域から大量の資金を吸い上げました。いったん不動産価格が下落ムードに突入すれば、中国経済へのダメージは計り知れません。

 一方、各地方政府も不動産価格を押し上げた張本人です。大規模な住宅建設、インフラ整備を展開した地方政府は、不動産価格の上昇により、税収、土地の売却で収益を得ました。そのため、地方政府と銀行、不動産開発会社はいわゆる「鉄のような強固な三角関係」を築き、市民から土地や物件を安く買い上げると、開発してから高値で売却。これは常套手段となりました。

 多くの地方政府の財政収入は土地と不動産に依存している(一部都市では年間財政収入の6割に達する)ため、中央政府も不動産価格の抑制措置を安易に取ることができません。

 その結果、積りに積もった中国の金融リスクは高まる一方で、最終的には、インフレまたは金融機関の破たんを招きます。中国の銀行は政府保有で破たんすることはないため、インフレは避けられません。昨年から、人民元/ドルの為替レートは長年の上昇ムードから下落に一転し、今後2~3年間、人民元の為替は正念場を迎えます。人民元資産を大量に保有する企業は然るべき応急策を講じたほうがいいでしょう。

 中国社会現状のいくつかの特徴

 1.貧富格差

 中国国内紙「時代週報」2009年6月25日付の報道によると、2006年、中国国内で個人資産が5千万元(約10億円)を超えたのは2万7310人で、1億元(約20億円)を超えたのは3220人、そのうちの2932人(91%)は高級幹部の子弟でした。

 その資産は主に一族の政治権力に由来しています。

  2012年、北京大学の発表によると、中国の貧富格差を測る指標・ジニ係数は0.6で、社会騒乱多発の警戒ライン0.4を遥かに超えました。中国人民銀行の報告書は「中国の0.4%の人が70%の富を占めている」と記しました。

 米ミシガン大学が米国科学アカデミー(NAS)で発表した最新研究結果によると、中国のジニ係数は約0.55で、所得格差の世界ワースト1位です。

 米メディア「ブルームバーグ」の昨年の報道によると、毛沢東死後に政治の主導権を握った「8大長老」(_deng_小平氏、薄一波氏、陳雲氏、宋任窮氏、彭真氏、王震氏、李先念氏、楊尚昆氏。全員故人)の子孫である「8大家族」のうち、計18人以上は、オフショア会社(海外会社)を所有または経営、26人以上は中国の優良大手国有企業を支配しています。彼らはまさに政治権力で巨額の富を築きました。

 元国家副主席の故・王震氏の息子・王軍氏、元最高指導者の故・_deng_小平氏の娘婿・賀平氏、元副総理の故・陳雲氏の息子・陳元氏の3人は、2011年時点で合計1.6兆ドルの資産を保有していました。この数値は中国の国内総生産(GDP)の5分の1、韓国と台湾のGDP合計に相当します。

 世界銀行の発表では、中国の1%の世帯が41.4%の資産を保有、社会の両極化がますます顕著になっています。

 2.官民対立、富裕層・政権幹部への敵対感情が強い

 マスコミを統括する中共中央宣伝部、国の最高学術機構・中国社会科学院の2010年の発表によると、ソーシャル・メディアでの中国の政治・政策に関するユーザー投稿の約9割は政府を批判する内容です。

 幹部または金持ちが絡む注目事件が起きると、ネット上の世論は往々にして真実を問わず、一方的に彼らを批判し、対立側を支持します。まさに「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」という現状です。

 当局発表では、地方政府の腐敗、環境破壊に起因する抗議、暴動事件は2010年以来、年間20万件を超えています。こうした状況の中で、2014年度の社会治安維持の国家予算は8150億元(約15.5兆円)に達し、軍の予算8082億元(約15.3兆円)をも上回りました。

 3.共産主義イデオロギーの破たん

 このことについて、ある皮肉な笑い話が巷で流れています。共産党の理論と政策を議論する党内部会議では、発言者も聞き手もだれもが発言内容を信じていない、それに、そのことを全員が分かりきっているというのです。

 現在では、体制の幹部から庶民まで、共産党のイデォロギーを信仰する人はもはやいません。

 この現状は日本にも影響を及ぼしています。国民へのマインドコントロールが利かなくなった中国共産党は政権の安定を維持するため、国民の民族主義情緒を煽ごうと、第二次世界大戦で中国を侵攻した日本を格好の相手と選定しました。政権の内部危機が生じるたびに、当局はこの手を使います。

 4.中国は共産党政権崩壊の前夜に突入

 いつの時代になっても、経済の効率と社会の公平は社会発展の2本足であり、そのバランスが保てられることで、はじめて社会が安定、成長できます。一方、過去の30年間、中国の経済成長過程において、公平は犠牲にされました。

 中国政府も事の重大さに気づいています。胡(錦濤)温(家宝)政権は2006年から、貧困層の収入を増やそうと、所得配分の改革を実施しましたが、効果は限定的でした。富裕層の中枢である体制の幹部が、自分たちの経済利益を貧困層に還元するこの改革を忠実に執行するはずがないからです。

 未来、習近平体制も類似の改革政策を継続するであろうが、歴史の流れに順応し政治体制を抜本的に変えなければ、改革が成功する可能性はきわめて低いでしょう。

(続く)
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