印刷版   

中国で資産インフレが地方に波及、引き締め効果未知数

 中国で資産インフレが沿海部の主要都市から次第に地方都市に波及している。金融当局は貸出金利及び預金準備率の引き上げ、資金吸収オペの拡大などの金融引き締め策を実施しているが、依然過剰流動性を吸収しきれない状況だ。これまでの経済成長一辺倒から政策転換し、経済と社会の調和のとれた発展を目指す中央政府が、政策変更に乗り遅れ気味の地方政府の意識改革を促せるかが今後の焦点だ。

 <金融引き締めにもかかわらず、資産インフレが地方に波及>

 中国は昨年の夏頃までは、金融政策は引き締め傾向だったが、その後は緩和気味に政策の舵取りを変更した。だが、最近では4月に1年物貸出金利を約1年半ぶりに5.58%から5.85%に引き上げ、さらに7月5日から金融機関の預金準備率を0.5%ポイント引き上げると発表し、金融引き締めの姿勢を示している。

 しかし、世界的に素材価格が上昇するなか、供給過剰の中国では製品価格の下落が続いており、これら引き締め政策も穏やかなものにとどまらざるを得ないのが実情だ。

 短期金融市場では、中国人民銀行(中央銀行)の呉暁霊副総裁が、資金吸収オペを拡大・強化し、企業や不動産向けの過剰融資を抑制することを表明しているものの、効果は未知数で、これまでのところ、中国はドル買い/人民元売りの為替介入が市場にもたらす過剰流動性を不胎化で相殺しきれていない。

 一方、中国のマネーサプライM2の伸び率は5月に19.1%と、昨年5月の14.7%に比べても依然高水準だ。昨年8月にいったん前年比で10%を下回った貸出残高の伸びは、5月に前年同月比で16%まで上昇した。

 貸出の伸びについては、今年が第11次5カ年計画の初年度ということもあり、インフラ投資が増えていることも背景だが、インフラ整備以外の不動産投資にも資金が流入している結果、地方都市でも資産インフレの兆候が見え始めている。

 5月の住宅価格指数は、上海で前年同月比マイナス2.9%となったが、大連では同プラス13.3%、北京でプラス8.2%、広州でプラス8.0%となっている。

 「プロジェクト投資については、中央と地方政府の認可が必要だが、地方政府の裁量が効く部分が大きく、地方の人民銀行や国有銀行が率先してプロジェクト・ファイナンスに手を出しているケースもある」と信金中央金庫・上席主任研究員の黒岩達也氏は語る。

 中央政府の青写真はあるものの、地方政府は財政のみならず、金融政策も自由に采配する傾向があるという。

 <中央政府の青写真と地方官僚の出世>

 中国は今年3月に採択された2006年からの第11次5カ年計画で、今後5年間の経済・社会の発展方針を明記した。そのなかで「調和の取れた社会」の実現が強調され、都市と農村の発展の調和、地域間の発展の調和、経済と社会の発展の調和などを目指すべき方向として示した。

 これを実現するために「努力目標」と「拘束目標」をかかげ、一人当たりGDPなどの経済成長率は努力目標になったのに対し、人口、エネルギー原単位の低下、年金加入人数の増加などが拘束目標となった。

 「これまでは、地方幹部は中央が掲げたすべての目標を拘束性のあるものと受け止め、その目標を超過達成することが中央への昇進につながると信じ、実際それが出世の早道だった」(黒岩氏)。実際、質より量を軸に経済成長を果たすことは、地方官僚にとって容易であり、この過程で企業からのキックバックなど経済的メリットも享受してきた。

 だが、今後は地方幹部は経済成長率などの努力目標を達成することに大きな意義を見出せなくなるという。つまり、経済と社会の調和を目指した拘束目標の達成に注力しなければ、中央への昇進はおぼつかなくなる。

 地方政府が量より質を重視した経済発展に注力すれば「地方政府による経済への直接的な介入は減り、企業の自主性と市場メカニズムによる調整機能が働く可能性がある」(黒岩氏)。

 他方、地方幹部は既得権を失うことになり、「エネルギー節約や環境保護にいくら努力してもカネにならないと感じれば、元の木阿弥になる可能性も否定できない」(同氏)。この問題を解決するためには、拘束目標を達成することに対して、中央政府が地方政府にどのようなインセンティブを用意できるかがポイントだという。



[ロイター27日=東京]

 (06/06/27 15:38)