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米ノースウェスト大のシー教授は、チャイナマネーが海外流出している可能性を指摘する。写真は、中国銀行香港支店(LAURENT FIEVET/AFP/Getty Images)

1.1兆元の預金が消える チャイナマネー流失の幕開けか

 【大紀元日本10月17日】米ノースウェスト大のビクター・シー(Victor Shih)教授は、短期間で莫大な資金流失が起こる不可解な中国の金融事情について、2つの可能性を指摘している。ひとつは巨大な「影の金融システム」(shadow banking system)で、もうひとつが国際貿易の人民元決済による、膨大なチャイナマネーの海外流出だ。

 英フィナンシャル・タイムズ電子版7日付のブログへ宛てた文章で、シー教授は、今年の7月に銀行から合計1.1兆元の預金を中国の家計および企業は引き出しており、これはGDPの2.5%に相当するが、これに対し8月は、家計が保有する預金は260億元のプラスに転じたものの、一方で1880億元に上る新たなローンが組まれているという。

 一体、これほどの巨額な預金はどこへ消えてしまったのか? 預金金利が物価上昇率に追い付かず、実質マイナス金利が続く中、家計の預金は、利潤を求めて企業の資金管理項目へ移転したとの見方はあるが、企業の預金残高はそれほど増えていないのが事実である。8月には、企業の預金残高は3710億元増えたが、同期間中の企業の融資額はほぼ同額の3600億元となっている。これにより、企業の資金管理項目からの提供は、企業の預金残高を増やす効果に反映されていないということになる。

 さらに、8月中の家計の貸出し金額は1880億元であったが、当然これらは預金として預けられていない。もしこれらの資金は企業に流れたなら、企業の預金金額は大幅に増えるはずだが、それに見合った金額の増加も見られていない。この巨額の保有金はどこへ行ったのだろうか。

 貿易入超による資金の行方は

 8月の中国の貿易収支は、再度1070億元の黒字を計上した。これに見合った金額が銀行の預入金に計上されるはずだが、実際銀行の帳簿上に現れていない。貿易黒字による収入の行方も謎のままだ。また、中国人民銀行(中央銀行)は人民元高の急上昇を抑制するための為替介入により、8月中に合計1630億元を市場(市中銀行への資金注入を通じて)へ放出した。

 一方、これらの資金は銀行のその他の資産プールに計上され、帳簿上から消えただけだという見方はある。しかし、企業の資産管理項目の資金は支出のための資金となっている以上、最終的にどこかの企業の帳簿に受取り金として記帳され、企業全体の預金残高が増加するはずだ。8月には預金準備率の引き上げも実施されていないため、これらの貿易黒字や放出金の行方は依然、わからないままだ。

 影の銀行と化す国有企業

 この消えた資金の謎を解く鍵として、中国の巨大な「影の金融システム」(shadow banking system)の存在が指摘されている。これはいわゆる、一部の銀行機能を働きながらも、当局による監督管理を受けない、あるいは緩んだ管理しか受けない非銀行金融機関のことだ。目下、中国では国有企業、民間担保会社、個人といった多様な影の銀行形態が存在しており、かつこれらの企業や個人の多くは政府との関連を有している。

 米株価情報サイト・マーケットウォッチのコラム作家、クレイグ・スティーブン氏によれば、中国の銀行システムは再び重大な挑戦に直面しているという。地方債務問題のほか、影の銀行業の躍動が新たな脅威となっている。政府によるマクロ経済へのコントロール機能を弱体化させ、投資者の利益を損なうことになる。

 現在、多くの国有企業は影の銀行と化している。当局の金融引き締め政策により、正規銀行からの融資が難しくなった中小企業に対し、これらの影の銀行は高利貸しを始めている。8月31日までに、受託貸付を公表した広告数は117件、うち上場企業は64社にのぼっている。そのうち、年間貸付金利が同期間の正規銀行を超えたものが35社もあり、最高金利は24.5%に達している。これらの企業による貸付金額は計169.35億元で、前年同期比38.2%増えている。影の銀行となる企業らはこれにより莫大な利益を獲得している。

 国有企業の中国揚子船業の第2四半期の粗利益のうち、4分の1が他企業に対する貸出しによる利息収入であるという。中国最大の移動体通信事業者で国有企業のチャイナモバイルは、金融子会社を設立し、貸出業務を展開している。仏ソシエテジェネラル信託銀行の研究報告では、3兆元近くの正規であるはずの商業貸付金は、すでに地下銀行へ流出したと分析している。野村証券傘下のノムラ・インターナショナル(香港)は、中国の影の銀行による貸付金額は8.5兆元に上るとの試算を発表している。

 資金流出の幕開けか

 行方不明となった資金のもう一つの可能性は、これらの資金はすでに中国から流出し、それにより銀行の預金の絶対金額の減少をもたらしたとビクター・シー教授は見ている。

 最近の資金流出と関連性の高いと見られているのは、クロスボーダー取引による人民元決済の実施である。これにより、輸入業者は人民元建ての対外支払いが可能となっている。また、合法的な経常項目での取引が行われる場合、投資者は人民元資金を海外へ移転させることも可能となる。今年、香港を経由した人民元決算金額は先月末で既に1兆億元に達している。

 結果、大口金額の資金が影の金融システムへ流入していくのであれば、今後政府のコントロールが効かない市場占有が急拡大しかねない。また、もしその資金が海外へ流出したのであれば、大規模な中国資金の流出の幕開けになるかもしれない、と教授は結んだ。

(翻訳編集・林語凡)

 (11/10/17 10:31)  





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資金流出  影の金融システム  クロスボーダー取引  人民元決済