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偏りある景気の過熱、迫り来るインフレ

文・宋浩

 【大紀元日本9月7日】

加速を維持する中国の工業生産、むしろ懸念すべきシグナル?

 米紙ウォールストリートジャーナルが1日に掲載したムーディーズのアナリスト・陳穎嘉氏の評論によると、中国のPMI(購買担当者指数)(※)は継続して上昇しており、これが、過剰生産の懸念を高めているという。

 ※注〔PMI指数は百分率で表示され、50%を経済の好況・不況の分岐点とする。この指数が50%より高ければ経済の拡張を示し、60%に近づく時、インフレ懸念が存在することを意味する。他方、これが50%を下回り、40%に近づくとき、不況の懸念が存在することを意味する。〕(宋浩)

 評論の指摘によると、中国のPMI指数は、7月の53・3%から、8月の54%へと上昇した。これは、6カ月連続の上昇となるが、同時に、工業における生産能力の過剰、インフレの懸念をもたらしている。

 また、筆者は次のように指摘している。「過去数カ月間と異なるのは、PMIの更なる上昇が、企業にとって必ずしも喜ばしいことではないということである。温家宝総理が先週、一部産業における過剰生産を警告した後、市場はずっと小心翼翼としている」

 評論は、中国経済の回復には恐らく紆余曲折があることを強調しており、上昇を続けるPMIが、その一つのシグナルであるとしている。しかし、工業生産の持続的拡大は、他方で多くの就業機会を提供できることから、労働市場の需給の改善を僅かながらも期待できるという。

 それでは、なぜ中共政府は、現在の国家の経済成長が予想を上回るものであると楽観的に宣伝し続けているにもかかわらず、懸念をもって新たなマクロ調整策を打ち出そうとしているのか。

 なぜ、経済成長、工業生産の成長ぶりを喧伝しても、我々民衆に仕事が見つからず、賃金が低いままなのか。

 また、銀行が景気を刺激するために多くの現金を市中に放出し、人々に投資を促したにもかかわらず、工場や企業、就業口が増えたと感じないのはなぜなのだろうか。

 香港大学教授・郎咸平氏の分析によると、中国経済は、非対称の「二元経済」モデルに属するという。つまり、鉄鋼、コンクリートのように、熱気冷めやらぬ「大建設」工業部門がある一方で、冷め切った製造業部門がもう一方にある。

 鉄鋼、コンクリートなどのホットな部門は、中共政府の「4兆元市場救済」措置において配慮され、活況を呈しているものの、これら大建設部門は、我々民衆の日常生活には大した影響がなく、また助けにもならない。例えば、橋、道路、高速鉄道の建設プロジェクトによって、一部の労働者やエンジニアに職を与えることができるが、大多数の民衆には大した助けにならない。

 他方、大多数の民衆の生計に関わる製造業部門は「冷え切って」いる。海外市場の需要の低迷、喚起できない国内の内需(皆の所得が低すぎるため)、高い中国の投資リスクから、製造業者が相次いで倒産している。また、製造業は、上記の市場救済策の恩恵を全く受けていないばかりか、上記の好況部門によって原材料価格が上昇しているために、生産コストが大幅に上昇している。このため、多くの製造業者は、本業に投資する意欲に乏しいだけでなく、ひいては、現金を持ち出して株式や不動産に投資するに至っている。

 更に、銀行が低金利で放出した資金は、民間消費を促す産業への投資には用いられず、むしろ、短期のサヤ取りを目的として、株式市場、不動産市場に流入している。その結果、現在、不動産市場、株式市場の高騰が引き起こされているが、これは、国家経済や、人民の雇用・所得にとって大した助けにはならない。

 他方、こうした表面上の経済過熱の錯覚は、インフレの問題を惹起し、一般民衆の生活をより困難にしている。多くの海外メディアは、相次いでこの問題を取り上げている。

 極力望まないことであるし、また遭遇したくない事態ではあるが、我々民衆は、今後待ち受けるインフレに対する準備をしなければならないだろう。

(「看中国」より翻訳編集・田中)

 (09/09/07 01:59)  





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