THE EPOCH TIMES

カントリーミュージックが中国語放送に 中国当局、66億ドルで世界メディアに拡張

2010年05月15日 12時21分
 【大紀元日本5月15日】ハワイの澄んだ海の美しさに陶酔するあなたは、いつも聞くラジオ番組を付け、カントリーミュージックを楽しもうとしたところ、流れてきたのは中国語放送。ヒューストンの小さな村にいるあなたは、ラッシュリンボーやヒップホップで午後のお茶の時間を楽しんだところ、「先ほどの音楽は、中国国際放送からお届けしました」とラジオからのアナウンス。

 エネルギーや資源、不動産市場、企業の買収、地球上の隅々まで手を伸ばす中国当局、今回は、輿論を左右するメディアに。金融危機の影響で欧米メディアが悪戦苦闘する中、中国当局がその国営報道機関を世界に全面的に進出させ、CNNやBBCなどの国際大手に挑戦を挑んでいる。その地域は、米国からアフリカのジンバブウェまで、総額は、66億ドルにも達する。

 4月25日付けの「ワシントン・ポスト」が、その詳細が伝えている。

 「中国最高指導部は、自分たちが世界に誤解されていると思い、そのため、経済から芸術まで事ごとにその観点を呈し、欧米社会の影響をけん制しようとしている」とワシントン・ポスト紙の関連報道が指摘する。

 拡張しつつある中国のメディア帝国

 同報道によると、北京当局は66億ドルの巨額を投じて、世界各地でテレビ放送ネットワークの構築や、英字紙へ数百万ドルの投資、各地でのラジオ局使用契約、世界的規模で視聴者に対して6ヶ国語でニュース放送などを行っている。

 国営通信の「新華社」は近いうちに、ニューヨークにある北米本部を、クイーンズからタイムズ・スクエア付近の広いオフィスビルに移転する予定。その米国支局も規模拡大となり、米国にある報道局数は、欧米通信社が中国に持つ報道局の倍以上。

 また、新華社の世界各地の取材拠点は、今の130か所から200か所に増やされ、すべての取材拠点にビデオ撮影記者を置く。去年から、同機関紙は自社のニュース放送チャンネルを開設、中国語と英語で放送している。

 中国の国家放送テレビ局、中央電視台(CCTV)も負けてはいない。すでにニューヨーク証券取引所から、英語の経済ニュースの生中継を始めている。2000年に開設したCCTVの9チャンネルは24時間の衛星英語放送。その世界各地の英語ニュースの取材拠点は近いうちに、10か所から50か所に拡大される予定。

 中国当局のラジオ局「中国国際広播電台」(CRI)を例に説明する。去年12月、米テキサス州のガルベストン地区のKGBCラジオ局と契約、朝から晩までの放送時間を全て買取、フルタイムで中国宣伝の番組を放送しはじめた。また、ハワイのKHCM-AMラジオ局も、音楽番組を中国語放送に切り替えさせられた。そのほか、ワシントンのWUST-AMラジオを含む米国とカナダの20数の都市で毎日、1、2時間の中国語放送が始まっている。

 豪州では、CRIは2つのFM放送を持っている。一つは首都のキャンベラに、一つは西部の都市パースにある。また、ケニアの首都ナイロビや、南太平洋、アフリカ、南米などの各地で、CRIがラジオ支局を設立した。

 海外中文メディアを牛耳る

 1989年、武力弾圧された学生民主運動「天安門事件」の直後、世界における中国当局のイメージは最悪に陥った。そのときから中国共産党政権は自らの思想を世界に広げさせるため、国際社会でのメディア宣伝を強化し始めた。

 まず、宣伝の焦点を華僑に定めた。CCTVは1992年、中国語衛星放送の4チャンネルを開設した。世界各地の華僑にニュースを放送する。その年間費用は500万ドルを超える。

 米国には多くの台湾系華人が在住している。CCTVは台湾系メディアの放送を制するため、米国各地の数十軒のケーブルテレビと地方テレビ局で、中国語ニュースとバラエティ番組を放送している。

 米国シンクタンクのジェームスタウン財団が2001年に作成した報告書で、北京当局が米国の中文メディアを牛耳る手法を紹介した。当時米国の四大中文メディア(世界日報、星島日報、明報、僑報)のうち、台湾系の「世界日報」を除いて、すべて北京当局にコントロールされ、「世界日報」も徐々に北京の圧力に屈し始めているという。

 ワシントン・ポスト紙の報道は、9年前のジェームスタウン財団のこの報告書の内容を実証した。中国当局は現在、親台湾派や、中国民主支持派、法輪功弾圧反対派の中文メディアまで、買収やコントロールに成功した。

 現地社会で輿論誘導の狙い

 これほど大規模なメディア戦略、その主要な目的は、欧米社会および海外華人に、中国社会と当局への認識を変えさせるほか、輿論の主導権を握り、欧米社会のものの見方を中国当局の角度に誘導するためであると、ワシントン・ポストの報道は分析する。

 2008年、中国国内の宣伝工作のトップである、中央政治局委員会の李長春氏が、メディア統制の重要性についてこう強調する:「今の時代、通信方法がもっとも先進的で、通信能力が最も強い国が、世界で最大の影響力を持つ」

 李氏は、昨年3月の来日中、日本のマスコミ14社の社長ら首脳と懇談、その席で、「良好な世論を作るよう努力してほしい」、「メディアは友好関係前進のために重要な責任を担っている」、「客観・公正な報道で国民世論が誤った方向に行かないようにしてほしい」と要請したことが、日本国内メディアに報道された。

 しかし、中国当局をいくら緊密に追随して、国内メディアの報道を鵜呑みにするのも、決して当局の機嫌を損なうリスクを回避できない。一部の記者は、国内機関紙の報道を国外に転載したため処分を受けた。例えば、中国国内で続発する炭鉱事故を国外の報道で転載すると、中国のイメージを損なうためのだ。

 一方、かつて、CRIの国外浸透のアドバイス役を務め、後に米KGBCラジオとの提携計画を批判したため解雇された米メディア・コンサルタントのマーク氏は、中国当局は外国のメディア市場にあまりにも無知で、その浸透戦略はブローカーのアドバイスに頼りきっていると指摘、66億ドルの大金の効果に疑問の見方を示した。

  メディア浸透のほか、中国当局は近年、欧米国家で「孔子学院」を続々と開校している。ソフト・パワーを用いて欧米国家への文化の浸透を図ろうとする、それは中国当局の国家戦略の一環である。

(翻訳編集・叶子)


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