印刷版   

国際会計事務所、中国国有銀行の不良債権統計に手を焼く

 【大紀元日本5月17日】国際会計事務所「アーンスト&ヤング」社は15日、同社が5月3日に発表した中国の銀行が多額の不良債権を抱えているとする報告書について、統計に誤りがあったと説明、報告書の撤回と調査を表明した。
 
 公表された報告書には、「中国商業銀行の不良債権総額が9,111億ドルに達し、そのうち4大国有銀行の不良債権総額は3,580億ドルを占めている」と記し、中共当局が公表したデータの2倍であった。同報告書が国際社会に注目される中、中国人民銀行は11日に反論する声明を発表、「アーンスト&ヤング」の報告書を批判した。

 この問題についてアナリストらは異なる見解を示し、アーンスト&ヤングの言動がころころと変わり、外部に唐突の感を与えたという指摘もあるし、実際の不良債権総額はヤング社の統計よりもさらに高いという見方もあった。また、一部の経済学者は、中国の銀行が抱える深刻な不良債権問題の根源は、中国共産党員が高級官僚として優遇処置を受けていることにあり、イデオロギーでは維持できない中共の一党独裁体制と不可分であると指摘した。

  BBCの報道によると、アーンスト&ヤング社は15日の声明の中、同社の3日の発表に関して「更に調査・分析を進めた結果、アーンスト&ヤングは、上述の数字を支持できないことが判明したほか、この数字には誤りがあると確信している」と回答し、争論を巻き起こしたこの報告書は、社の内部審査の過程を経ていなかったと説明、報告書を撤回する意向を表明した。

 一方、中国銀行や、中国工商銀行などの大手国有銀行は今年年内に相次ぎ香港で株式上場する予定で、アーンスト&ヤング社は中国工商銀行の監察を引き受けている。

 会計報告書の撤回は、中共政権による圧力か
 
 アーンスト&ヤング社の対中国関係部の責任者・粱紫珊氏は、中共政権による圧力で会計報告書を撤回したことを否認しているのだが、「中共政権は近い将来に崩壊する」という著書の作者、法律学者章家敦氏は、「アーンスト&ヤング社のような著名な会計事務所は、(今回のような重要な)報告書を発表するのに、事前の内部審査を行わないはずがない」と説明、今回の報告書撤回の背後には、中共政権による圧力があったことは明らかだと指摘した。「アーンスト&ヤング社は中国銀行や、中国工商銀行の香港市場での株式上場の準備活動に関わっており、中共政権を怒らせてしまうと、会社に多大な損失をもたらすことになる。中共側は、外部に国有銀行の抱える多額の不良債権に目を向けてほしくない。上場で得る資金が大幅に減少するためだ」と章氏が分析した。

 ヤング社の報告における推計値は、中共政権の統計を大きく上回っていたが、これは一部の国際経済学者の推計と比べて、決して大きいとはいえない。

 章家敦氏は、中国の銀行が抱える不良債権の総額は、アーンスト&ヤング社が報告した9111億ドルをさらに超えているとみている。過去十年間、中国の銀行が抱えている不良債権の問題について、論議が繰り広げ続けられていた。欧米のアナリストは、実際の数値は中共政権の公表より遥かに高いと疑っており、不良債権率が50%に達しているとの説もある。

 近年、中共政権は銀行の改革を行い、債権放棄や、国による資本注入(中共政権は、銀行の苦境脱却のために、既にGDPの25%~30%もの資金を銀行に資本注入してきた)、香港での株式上場、欧米の戦略投資者に少量の株を譲渡および内部管理体制の改善などの措置を講じて来た。それについて、章家敦氏はこのような中途半端な改革は、銀行の経営を改善するどころか、むしろさらに状況を悪化させたと指摘している。

 その根拠について、章氏は以下のように説明した。「銀行の部分的な資産を再構成するというやり方は、基本的には効果がない。なぜならば、銀行の内部関係者は一定の時期になると政府は更なる資産の再構成をやってくれると頼ってしまい、自ら自分たちの融資方式を変えるとの自覚が生まれてこない。中国銀行業の問題の根源は、現在の状況がどんなに深刻であることではなく、新しい不良債権が発生し続けていることである。アーンスト&ヤング社の報告書もこの問題を特に強調していた」。

 経済学者:中国の銀行が抱える深刻な不良債権問題は、中共の一党独裁体制によるもの

 また、カーネギー国際平和基金の裴敏欣(ペイ・ミンシン)研究員はこのほど、中国金融システムにおける不良債権を分析、危機的な状況であるにもかかわらず改革が進まないのは、中国共産党員が高級官僚として優遇処置を受けていることにあり、イデオロギーでは維持できない中共の一党独裁体制と不可分であると指摘し、以下のように詳しく分析した。

 官製側のデータによると、2003年において、530万人の共産党員が、国有企業における高級管理職に就いている。共産党は、国有企業の最高執行責任者の約56%、高級管理職の56%を任命している。

 これらの党員は、自己の管理能力を証明するため、経済的成果(あるいは、表面的な成果)を必ず出さなければならない。そのためには、たとえ実行不可能なプロジェクトであっても、党が、これら官員に対して資金調達のルート(主として銀行融資)を提供することが必要となる。

 その結果が、制度性の浪費である。特に、中国中層部の官員は圧力を背負っており、確定した経済成長目標を早く達成する必要があること(市長の平均任期は3年前後)から、たとえ長期的な価値が疑わしくとも、短期の政治実績を飾るためのプロジェクトを実施することを好むのである。

 こうした乱投資の比率はかなり高い。世界銀行の推計によると、90年代、中国における固定資産投資の約3分の1が浪費された。中国中央銀行の報告によると、2000年から2001年にかけて、政府の命令による融資が、不良債権の60%を占めていた。こうした、経済効率を軽視する行為は、中国の銀行において、責任を負わず、責任が問われないという制度的文化を醸成してきた。2002年に、3500人の銀行職員を対象として実施した調査報告では、対象者の20%が、マネージャーのミスで不良債権が発生した時、彼らはいかなる処分も受けておらず、対象者の46%は、銀行は、不良債権を発見するためのいかなる措置もとっていないとしている。また、対象者の80%は、支店の腐敗行為が、「非常に普遍的に」、または「常に」発生していると答えた。

 中共政権が今行っている銀行の改革は、便宜上の緊急措置であるに過ぎず、それを認めた主な理由は、彼らが政治上の痛みを負うことを避けているからである。政府が優遇制度の除去に着手しなければ、低効率な資本利用(これは、日増しに増加する不良債権において体現されてくる)が、経済成長の足かせとなるであろう。

 また、国際通貨基金IMFによるある研究は、「中国銀行業の改革は、銀行のリスク管理と貸付けのバランスシートを改善していない」との結果を出している。

 (06/05/17 17:09)  





■関連文章
  • 米国務副長官:中共が抱える問題は山積み(06/05/12)
  • 9000億ドルに迫る中国の不良債権額 外貨準備高を超える(06/05/04)
  • 多額の不良債権を抱える中国国有銀行、外国資本を大量導入(06/03/08)
  • 郵政民営化法案が成立、首相「国民のおかげ」(05/10/16)
  • 中国建設銀行、香港上場予定 専門家ら投資家に警鐘(05/10/14)
  • 中国四大銀行、支店長ら42人海外に集団逃亡(05/10/13)
  • 米議会議員、中国投資の潜在的危険性を警告(05/08/30)
  • 中国、不良債権問題で銀行の人事にメス(05/07/29)
  • 中国株式市場は経済と逆行する謬説(05/07/05)
  • 中国財政省金融局長、汚職容疑で逮捕(05/07/01)
  • 中国交通銀行が香港で上場を先行(05/06/20)
  • 中国銀行、支店長を大量に処分(05/06/04)
  • 仙台、第三回「九評共産党」シンポジウム開催(05/05/26)
  • 中国の現状とマスコミの使命(05/05/20)
  • 人民元切り上げでバブル経済の破綻(05/05/16)