政府は6月月例経済報告の基調判断を「景気は回復している」とし、2月から示している判断を据え置いた。各論では物価動向について、5月までの「改善がみられるものの緩やかなデフレ状況にある」との表現から「物価の持続的な下落(デフレ)という状況にはあるが、改善がみられる」に上方修正した。
「デフレ」の文言は残しながらも、より「改善」を強調する表現に改めた。政府が物価の判断を上方修正するのは3カ月ぶりのこと。ただ、内閣府幹部は「デフレ状況がある程度解消される方向性は維持されているが、現時点で、デフレがなくなったとは言えないとの判断だ」と説明している。
先行きについては「企業部門の好調さが家計部門へ波及しており、国内民間需要に支えられた景気回復が続くと見込まれる。一方、原油価格の動向が内外経済に与える影響等には留意する必要がある」との見方を維持した。
物価の判断は3カ月ぶりに上方修正した。消費者物価指数(CPI)のうち内閣府が基調判断をみるうえで重視している特殊要因を除く消費者物価指数(コアコアCPI)は、1月に前年比0.1%上昇した後、2月、3月のほぼゼロ近辺から4月に前年比0.2%上昇とプラス幅を拡大させた。4月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、コアCPI)も前年比プラス0.5%と4カ月連続で0.5%上昇を維持。改善傾向を重視して判断を上方修正した。
ただ、デフレ脱却との関係では、内閣府幹部は「8月のCPI基準改定では0.2―0.3%下方修正される可能性が高い。そこまで織り込んだ形でコアコアCPIをみるとまだ安定的なプラスにはなっていない」とし、「現時点でデフレがなくなったとは言えない」と説明している。
基調判断は「景気は回復している」とし、判断を据え置いた。
項目別では、住宅建設を5月の「おおむね横ばい」から「増加している」に上方修正。好調なマンション着工を背景に2005年9月以来9カ月ぶりに上方修正した。
輸出は「増加している」から「緩やかな増加」に下方修正した。電気機器の弱含みが全体に影響し、判断を2004年11月以来1年7カ月ぶりに下方修正した。だだ、先行きについて内閣府は「世界の景気は着実に回復していることに伴って、増加していく」と判断している。
個人消費は「緩やかに増加している」とし、判断を据え置いた。
設備投資も判断を据え置き、「増加している」とした。1―3月期法人企業統計で、製造業が7・四半期連続増加し、非製造業も増加に転じるなど、「増加基調が確認された」(幹部)という。設備投資の先行指標である機械受注(船舶・電力を除いた民需の受注額、季節調整値)も、4月に前月比10.8%増と市場の予想を上回る伸びとなった。内閣府では「足元の設備投資の強さが確認されたと同時に、先行きもある程度力強さが確認できた」(幹部)としている。
<デフレ状況が微妙な段階で、デフレを再定義>
政府は物価の判断を上方修正するのにあわせて、表現方法を微妙に変化させた。「物価の持続的な下落(デフレ)という状況にはあるが、改善がみられる」とし、政府の文章には珍しいカッコ書きを入れて、「デフレ」の文言を残すことに配慮した。
物価動向の改善を強調する内容であれば、5月までの「改善がみられるものの緩やかなデフレ状況にある」を「緩やかなデフレ状況にあるが、改善がみられる」としてもよく、実際、この文言も文言修正の選択肢のひとつに上がった。
最終的に、「物価の持続的な下落(デフレ)という状況にはあるが、改善がみられる」になった理由について内閣府幹部は「もともと、物価の持続的な下落がデフレの定義である。デフレ状況が微妙になってきたこともあり、より正確を期し書き込んだ」としている。
さらに同幹部は「デフレで表現しているのは物価の状況であって景気全体ではない。カタカナ書きの『デフレ』というと景気の悪化というニュアンスを含んでしまうため、正確を期す意味で、デフレは物価の持続的な下落であることを再確認する意味で解説的につけた」と説明した。
[ロイター13日=東京]
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