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中国民話:黄泉の国の審判

 【大紀元日本6月21日】北宋の時代、かの有名な包拯(ほうじょう、999年-1062年)が宰相だった頃、ある村に足の不自由な10歳の孤児が住んでいた。孤児の生活は大変貧しく、彼はこじきをしながら暮らしていた。

 その村には橋のない川があり、村人はその川を渡るときに非常に不便な思いをしていた。

 特に、大雨などで水位が上がると、川を渡る事はほとんど不可能となってしまう。しかし、何年たっても村人たちは橋をかけようとはしなかった。

 ある日、村人たちは足の不自由なこじきの少年が川辺に石を積み上げているのを見た。村人たちは不思議に思い、少年に何をしているのかと尋ねた。すると、少年は、石を積んでみんなのために橋を作りたいと言った。村人は本気にせず、ある者は嘲笑した。しかし、少年は来る日も来る日も石を積み続け、数年が経ち、それは小さな岡になった。村人たちは心を動かされ、石の収集を一緒に手伝うようになった。

 そして、村人が大工を呼び、橋の建設が始まった。少年は出来得るかぎりの手伝いをして、皆と一緒に一生懸命働いた。しかし、不幸な事に、橋が完成する前に、石の破片が少年の目に当たり、彼は失明してしまった。村人は心優しい少年の不幸を嘆き、天は不公平であると不満を言った。しかし、少年は愚痴ひとつこぼさず、相変わらず建設現場に来ては黙々と皆を手伝った。橋が完成すると、村人たちは喜んだが、同時に少年が目の光を失った事に心を痛めた。しかし、少年はそのことを気にする風でもなく、ただ橋の完成をとても喜んでいた。

 すると、突然雷雨が村を襲い、まるで出来たての橋の埃を洗い流すかのような激しい雨が降った。耳をつんざくような雷が鳴ったかと思うと、少年はばったりと地面に倒れた。少年は雷に打たれて、死んでしまったのだ。村人は大変なショックを受け、少年のために泣き、天は不公平だと嘆いた。

 しばらくして、人々から「正義の包」と呼ばれて人望の厚かった包拯がその村を通りかかった。人々は包の前に集まり、少年の話を伝え、質問した。「なぜ善き人々が、その報いを受けることができないのですか。それならば、どうやって人々は将来、善い事をしようなどと思うでしょうか」。感情的に問いつめる村人たちに触発され、包は次のような言葉を一筆書いた。「善い事をするよりも、悪い事をすればよい」。

 都へ戻ってからも、包首相は心が休まらなかった。あのような心優しい少年に対する、度重なる天罰は不公平であるとしても、自分が書いた一筆は果たして正しかったのかどうかと悩み、困惑していた。

 ある日、息子が生まれたばかりの皇帝が、個人的に包拯と会いたいと言ってきた。皇帝によると、生まれたばかりの赤ん坊が一日中泣き止まず、理由も分からないのだという。包が小さな王子を見ると、それは、それは、美しい肌をしていたが、その手の平には文字が浮かんでいた。それは、包が村で一筆書いた文字だった。びっくりした包は赤子の手の平を急いでこすると、不思議とその文字は消えた。皇帝は包の行動が分からず、説明を求めると、包はうやうやしくひざまずいて、事の顛末を話した。この不思議な話を聞くと、皇帝は包にあの世を訪れ、謎を解き明かしてくるよう命じた。

 包は、「あの世枕」で眠りにつき、黄泉の国に行って来た。すると、いろいろな事が分かってきた。あの不幸な少年は、前世で恐ろしい罪を犯した悪人だったのだ。その罪を返済するには、3回にわたる輪廻が必要とされていた。

 最初、神は彼の初めの輪廻を孤児で貧乏、寂しい人生と定めていた。2回目の人生は、両目を失明した人としての人生、そして3回目は雷に打たれて死ぬ運命と定めていた。従って、少年の初めの人生は足が不自由で極貧だったが、それでも善い人になろうと努め、他の人を助けようと努力した。そこで神は、2世に渡る彼の罪の返済を一回で終わらせてやるために、少年を失明させた。しかし、それでも少年は不満に思わず、引き続き他人を思いやっていたので、神は3回目の罪の返済を初めの人生で終わらせてやることにした。それで、少年は雷に打たれて死んだのである。

 地獄の王は包に言った。「三世に渡る罪の返済を、一生で終わらせるのは、よいことではないか。少年はいつも善い事を行い、自分のことよりも他の人を助けようと生きたことで、たくさんの徳を積んだ。従それ故、今、王子として生まれたのだ」。

 (07/06/21 12:03)  





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