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椎名誠著『黄金時代』(文春文庫)

【本との話】「私の中の黄金」時代

 【大紀元日本1月9日】金ピカらしき物なら何でも蒐集する友人がいて、彼の自宅兼仕事場にお邪魔して、いつもどおり煌々と輝く裸電球をながめていたら、すわ! 天井の片隅の神々しくしつらえた神棚仕様の本棚に、私がたまたま最近読んだばかりの本がいたずらっぽく一冊飾られていたのに・・・驚いたのです。

 こうしておくと本がキンキラ金に輝いて、いつまでも記憶に残るのだというのが友人の言い分でしたが、私が読んだ本を先回りして言い当てられていたのに、いつもながらにびっくりさせられたのです。

 ついこのあいだ私が椎名林檎の楽園ソングを口ずさんでいたのを、どう結び付けてしまったのか暗号のように椎名誠の『黄金時代』を仕入れてきたことが、今回の茶目っ気たっぷりな人を喜ばすためのいたずらの顛末であったようです。

 楽園の「林檎と黄金」時代を椎名でリンクするという離れ技は、もちろん私の椎名ぞっこんを充分に承知した上でのことで、今回も私の無意識な願望にしたたかな止めを刺された思いがしたのです。人は3歳以前の体験を思い出すことができません。3歳を過ぎてようやく私という意識が、朝日のように内界と外界のハザマからおぼろげに立ち昇ってきます。

 3歳以前の体験を黄金時代と名づけて「記憶を辿るグッズや思い出を探し当てる旅にいつでも出かけるべきだ」というのが彼の持論でした。人生の黄金時代を大切にすることの出来る人は、どんなことがあっても人をいじめたり、自分を殺(あや)めたりすることはないというのも、彼の人生訓の金科玉条の言葉でした。

 椎名誠さんが描いた『黄金時代』は、得体の知れない無法な喧嘩エレジーに明け暮れた、青春時代への反語的な苦い決別のオマージュ(賛歌)です。手触り確かな人生の黄金時代を青春の中にではなく、これから続く未来の中に築くことを決意するために、必ず書かれなければなりませんでした。まばゆい青春期を経た3歳以後の「私という黄金」の中に、手作りで仕上げる果てしない物語なのです。

(そら)

(09/01/09 00:00)



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