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【中国伝統文化】 真夏の雪 竇娥(とうが)の嘆き

 【大紀元日本9月4日】もし真夏に雪が降ったら、あなたはどう思うだろうか。異常気象とみなし、科学的な答えを求めるかもしれない。しかし、中国人ならばこう言うだろう。「どこかで、とんでもない冤罪があったに違いない」。中国元朝の時代(1271―1368)に書かれた元曲「竇娥冤(とうがえん)」という物語を思い起こさせるからである。

 昔、楚州という所に竇娥(とうが)という名の貧しい少女がいた。彼女は幼い時に母親を亡くした。父親は科挙の試験を受けに都へ行くお金を工面するために、蔡(さい)家の寡婦・蔡婆に多額の借金をした。ただ、それを返す当てもなく、父親は仕方なく竇娥を蔡家に童養媳(トンヤンシー)(※)として売った。

 数年後、成長した竇娥は蔡家の正式な嫁になったが、間もなくして夫が亡くなり、寡婦となってしまった。蔡家には寡婦の竇娥とその姑で寡婦の蔡婆しか残っていないのを知ったならず者の張驢兒(チャン・ルーアー)とその父親は、これをチャンスとばかりに、それぞれ竇娥と蔡婆に結婚を迫った。蔡婆は承知したが、竇娥のほうは断固として首を縦に振らなかった。

 数日後、蔡婆は病気になり、竇娥に羊肉のスープを作るよう頼んだ。それを聞きつけた張驢兒は、出来上がったスープにそっと毒を忍ばせ、蔡婆を殺そうとした。蔡婆が亡くなれば、竇娥を無理やりにでも自分と結婚させることができると考えたからだ。

 ところが、スープを飲もうとした蔡婆はふと気分が悪くなり、側にいた張驢兒の父親にスープを渡した。毒が入っていることを知らない父親は、スープを飲んだ後に突然地べたに倒れ、苦しみながら死んでしまった。

 張驢兒は父親が亡くなったことに激しく動揺し、自分の犯行が明るみに出るのを恐れて、罪を竇娥になすり付けた。張驢兒は殺人罪で竇娥を訴えた。

 当時、裁判所も腐っていた。たんまりと張驢兒から賄賂を受け取った裁判官は竇娥を拷問し、自白を強要したが、彼女は頑として罪を認めなかった。竇娥が親孝行な嫁であることを知っていた裁判官は、姑の蔡婆を竇娥の目の前でムチ打つよう命じた。蔡婆の身を案じた竇娥は、仕方なく裁判官らの言う通りに自白せざるを得なかった。

 竇娥が自白すると、裁判官は彼女に死罪を言い渡した。刑場に連れて行かれた竇娥はすでに助かる道がないことを知り、やり場のない悲しみと怒りで胸が一杯になった。彼女は天を仰ぎ、「どうか雪をたくさん降らせて下さい。その雪が、私の屍を地中深く埋めてしまいますように」という最後の言葉を残した。

 彼女の悲しみは、天地を揺るがせた。死刑が執行された直後、空は突然真っ暗となり、雪が降り始めた。陰暦の6月、真夏のことである。その後3年間、当地は深刻な干ばつに見舞われた。

 その後、科挙の試験に合格して都で文官となった竇娥の父親は、この悲痛な事件を知った。父親がすぐに裁判のやり直しを求めた結果、張驢兒は死刑、裁判官も厳しい罰を受けたのである。

(※)トンヤンシー:中国、台湾では、息子が幼いうちに、将来の嫁にするために、幼い女の子を買い取る風習があった。買い取られた女の子をトンヤンシーといい、息子が成人するまでは貴重な労働力として家事等の労働を強いられた。幼い息子に対して成人女性を買い取り、将来の夫となる息子の世話をさせる場合もあった。

 
(翻訳編集・郭丹丹)


 (11/09/04 07:00)  





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竇娥  竇娥冤  冤罪  


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