防空識別圏、専門家「国内向けのパフォーマンス」

2013年12月03日 15時35分
【大紀元日本12月3日】中国が設定した防空識別圏の問題で、台湾の厳明国防相は2日、立法院(国会)の委員会で、中国の識別圏内に進入した自衛隊機や米軍機に対し、中国軍機が緊急発進したことをレーダーで確認したと述べた。確認したのは11月26、27、29日の3日間とも明かした。中国国防省は同29日に同圏内に進入した自衛隊機に、緊急発進したと発表したが、26、27日の発進は公にしなかった。国内外に領土を守る固い決意をアピールする絶好のチャンスをなぜ見逃してしまったのか。識者の間では、防空識別圏の設定は国民に対日の強硬姿勢を見せながらも、これ以上反日感情をヒートアップさせたくない「国内向けのもの」だとの分析が出ている。

 ドイツ国営国際放送ドイチェ・ヴェレは11月30日の記事で、「推測」と断ったうえで、「中国では新しいリーダーはこれから着手する社会・経済改革のため、対外では攻撃的になる傾向がある」とし、11月に閉幕した共産党の重要会議、三中全会で投資プロジェクトへの民間参加が許可されるなどの国有企業改革が決まったことが影響していると報じた。この改革に国有企業や国有企業と癒着しうまい汁を吸ってきた地方政府が反発している。同時に推進された腐敗への取り締まりで数多くの幹部と党員の不満を招いた。「一連の改革で自由経済主義者の名を手に入れた習主席だが、経済の自由化が思想の自由化に繋がると懸念する党内の保守派を安心させるため、民族主義を利用した」と分析した。

 米フィナンシャルタイムズ紙(電子版、11月28日)も同じ論調の記事を掲載した。「習近平国家主席は自身が掲げた中華民族の偉大なる復興を実現させるため、国民の注意力を海外に向けようとしている」と分析した。さらに、同記事は「国内に重大な問題が起こらない限り、中国は戦争を起こさないだろう」と国内情勢が念頭にあったことを述べた。

 マイアミ大学のジェーン・ドライアー教授(政治学専門)はAP通信に対し、国内の強い反日感情への配慮で、中国政府がギリギリの作戦を強いられていると指摘、「緊急発進は国内向けのパフォーマンスで、通告なしで進入してきた外国の飛行機に今後も緊急発進をかけるだろう」と空での緊張状態が今後常態化するとの見解を示した。ただ、撃墜するなどの危険行為には出ないともみている。

 ウォールストリートジャーナル紙も「中国の指導者は愛国主義を国民の前で強い姿勢で見せながら、国際社会には識別圏問題を柔軟に対応するとのメッセージを送っている」と中国政府が対内、対外政策のバランスを探っているとしている。

 ただ、領海と違って、空中衝突が起こりうる空で緊張状態を引き起こす中国政府にとって「ギリギリの作戦」はあまりにも危険である。

 それを意識したからか、中国外務省の秦剛報道官は記者会見で「防空識別圏の空域を管轄する能力がある」としつつも、「各方面が積極的に協力し、共同で飛行の安全を保障するよう期待する」とトーンダウンとも受け取れる発言をした。

 中国政府の「ギリギリの作戦」は国内でも行われている。今回の問題では国内で反日デモが発生しなかった。FT紙は北京で識別圏について市民を取材したところ、「良く分からない」との回答を得たという。同紙は大手ポータルサイトの関係者の話として新華社通信以外の記事を掲載してはいけないと通知されたことを伝え、「とりわけ米爆撃機が圏内に進入してきたことに触れてはいけない」と神経を尖らせている様子だという。

 台湾国務省はさらに、防空識別圏が設定された23点xun_ネ後、米軍機と自衛隊機はそれぞれ13回、85回進入したと明かした。こうした動きが中国国内で伝えられなかったのは、国民の反日感情を刺激したくない政府の思惑があるものとみられる。

 しかし、中国国内問題が山積する今、この「ギリギリの作戦」で乗り切ることができるのか。「これこそ危険である」と前出のマイアミ大学のジェーン・ドライアーは指摘した。

(翻訳編集・高遠)


 

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