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【ショートストーリー】おにぎり

文:清玄

 【大紀元日本6月24日】李君(26)は、中国雲南省の田舎から出て来た留学生だ。日本の大学へは民間基金の奨学金で来日したが、生活費等を考えると、やはりアルバイトをしないとやっていけず、夜間スーパーで働いている。

 李君が来日してスーパーで働くようになってから「奇怪だ」と思うことがある。それは「賞味期限」と称して、大量のまだ食べられる食材が捨てられていることだ。李君は、気温も湿度も高い地方で育ったので、食材の匂いを嗅ぐだけで腐敗しているか否かが分かる。

 李君自身もアルバイト先からこのような賞味期限切れの食材をもらってきてしょっちゅう食べているが、別に健康を害したことなど一度もない。むしろ、地球の資源を大事にできたとエコ的に誇らしい気持ちだった。

 李君が最近になって大変に心を痛めたことがある。夜間、よくバイト先のスーパーに買い物に来てくれていた顔見知りの日本の老婆が、おにぎりを一個万引きして「覆面万引きGメン」に挙げられたことだ。

 李君が、店の取調室を覗くと、店長が切れまくって「…今度またやったら、警察に行ってもらいますからね…」と力んでいる。老婆は、「…年金が5万円しかなくて、家賃を払うといくらも残らず、ついおなかがすいて…」と言っている。

 李君は、信じられなかった。飽食日本では、「賞味期限」と称してまだ食べられる食材が大量に捨てられている、その一方で年金受給者が飢餓に喘いでいたのだ。そこで、李君は一計を案じた。賞味期限切れの食品を自ら「鑑定」して、安全なものだけシールを張り替えて老婆に渡すようにしたのだ。

 ほどなくして、老婆の「盗癖」はなくなった。しかし、李君の働いているスーパーへは、来なくなった。その理由は、意外な所で判明した。就学先の図書館で見た新聞に、くだんの老婆が自宅で誰にもみとられず、ひっそりと死亡していたという記事が載っていたのだ。

 老婆は、李君からの「食糧援助」で生活に少しばかりの余裕ができ、数十年ぶりにクーラーを駆動させて寝入ったのだが、風邪をこじらせて肺炎になり、今度は医療費が払えないために抗生物質が手に入らず、ひっそりと自宅で息をひきとったのであった。

 老婆が発見されたのは、死体が腐乱して異臭が漂い始めた死後十数日後であった。李君は天を仰いでつぶやいた。「…人を殺すのは貧困ではなくて、周囲の無関心ではないのか?」

 (08/06/24 00:00)  





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