THE EPOCH TIMES

三峡ダム問題 低下する長江の自浄能力 憂うべし生態変化

2011年11月09日 07時00分
 【大紀元日本11月9日】「朝、長江の河畔にやって来た。背景には山を背に建てられた三峡移民の新しい県政府所在地、眼前には三峡ダムの貯水地が広がる。

 低く垂れこめる黒い雲、漂う薄霧も長江の壮麗さを遮ることは出来ない。しかし、川面に浮く大量の漂流物を見ると、いっぺんに興ざめする。

 2隻の湖面清掃船が作業している。船上にはゴミが山のように積み上げられているが、作業員たちは木の枝、発砲スチロール、紙くず、小ビンやビニール袋を拾い続けている。船体には人々に母なる河を守り、水域の清潔保持を訴える横断幕がかかっている」

 先月末、米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)に「今日の三峡、生態を憂うべし」と題された張楠記者の手記が掲載された。冒頭には記者自身が目にした情景を綴る。

 低下した長江の自浄能力

 三峡ダムが貯水を開始して以来、汚染減少と生態保護は避けて通れない重要な任務となっている。今年5月18日に開かれた国務院常務会議では、三峡プロジェクトは生態環境保護などの方面において早急に解決を要する問題を抱えているとの認識が示された。

 中国民間組織「公共環境研究センター」の馬軍主任は、汚染情況は楽観できないと話す。

 「中国の4割前後の廃汚水が長江に捨てられている。これまで長江は流し込まれた水質に対応できていた。これは長江が強い自浄能力があったからだ。しかし今の問題は、ダムが建設され長江の持つ自浄能力が低下したことにある」

 記者は重慶市雲陽県から乗船し、長江の流れに沿ってダムのある湖北省稊(てい)帰県まで下った。今の三峡は以前のような激流難所はなく、川面は静かで水流は緩やかだという。

 「三峡ダムの貯水により、河水が流れる感覚はなく、上り下りの船の速度も基本的に同じで時速20キロ前後だ。貯水前は下りの船の速さは時速30キロに達し、上っていく船は時速15キロほどだった」。あるガイドは船が三峡を通過するときに話した。

 馬氏の指摘する長江の自浄能力低下の原因はここにある。

 水が、激流から緩やかな流れ、或いは静止した状態に変わったため、自浄能力がそれに伴って低下する。一方では汚染物の排出量は減らない。「水質を維持していくことは非常に難しい」と同氏は述べている。

 流れが静かになった長江では、漂流物が堆積しやすくなっている。航行中、常に漂流物が一面に漂っていると張楠記者は記した。同様の問題は新華社も取り上げた。9月下旬の増水ピーク後、ダム水域に集まった漂流物は長さ500メートルのゴミの帯を作ったという。

 稊帰県環境局の郝(かく)光華副局長によると、現在同県には30隻以上の清掃船がある。河岸には観測点が設けられ、どれくらい清掃船を出すかは、漂流物の量を見て判断するという。ピーク時は毎日150隻の船が出ていたと副局長は話した。

 蔓延傾向にある支流の汚染

 馬氏によると、多くの長江支流ではアオコが発生している。つまり、河水の富栄養化レベルが高いため、適した天気や水温条件になると藻類が爆発的に発生する。「対策をとらないと、アオコは支流から本流に蔓延する」と馬氏は危機感を示した。

 澎溪河は長江の支流のひとつだが、現地住民によると、以前は飲用出来たこの河の水は今や身体を洗えば痒くなり、明らかに水質が変わったという。

 生態への影響

 三峡ではダム建設後、600キロ範囲内に点在していた多くの魚類の産卵場がダム底に沈み、稚魚のふ化率が大きく低下したと馬氏は説明する。三峡の上流ではさらに10カ所超の大型ダムの建設が予定されているという。

 中国国内メディアは、「変江為湖(河を堰き止め湖にする)」ことにより、急流を棲家としている多くの魚たちが徐々に上流へ移動し、魚類群の生態環境が変化していると報じた。これは水生生物の多様性を脅かしているという。

 馬氏は数十種の希少で特有な現地の魚類の環境は危機的状況にあると見ている。「生息地が失われ、種の数が減少した。これは大きな損失だ」と馬氏は述べる。また船の頻繁な往来は、魚類、特に水深の浅い場所で泳ぐ魚にとって脅威となっていると同氏は指摘している。

 人口増加による脅威

 三峡ダム区周辺では新しい都市が雨後の筍のように造られている。雲陽、高陽、巴東、稊帰、屈原、郭家壩などは全て旧所在地が長江に呑みこまれた後、再建された町だ。

 新しい町には昔の素朴さや風情は無いが、近代的できれいに整備されており、一部の建物は地方色の有る伝統的なデザインも取り入れられている。しかし、増え続ける人口は三峡ダム区の生態保護にとって難題を投げかけている。

 支流の澎溪河流域にある雲陽、開県2つの新都市は2020年に人口50万人の都市に発展する計画が立てられているが、移転前の雲陽は65000人余りの規模だという。

 三峡ダム建設前、河川沿岸の多くの町は汚水を直接川に流していた。新しい都市では汚水処理場を建設し汚染物の排出減少に積極的な作用を発揮していると馬氏は評価する一方、以前は国からのダム区に対する資金投入は少ないが、今は投入が増え、多くの大規模な化学工場を建設していると指摘している。

 「人口や工業は今後もさらに膨張するため、汚染を減らす努力は相殺されている。全体的に見れば、三峡の汚染はさらに進行しかねない」

 また、汚水処理場の配管設備がまだ完備されておらず、汚泥は十分に処理されずに河川に流れ込んでいるため、二次汚染が起きていると同氏は指摘している。

 農村部の管理が困難

 ゴミの処理も問題だ。張楠記者は絵のような風景の高陽湖畔の山の斜面に大量のゴミが捨てられていたのを目撃している。ひどく目障りなこれらのゴミは雨が降ると湖に流れ込んでゆくという。

 稊帰県環境局の郝副局長は汚染源抑制に関して、最大の問題は都市ではなく、農村だと話す。農業で使用される化学肥料や農薬、さらには養殖面の汚染に関しては、農家一戸ずつ管理する必要があり、その実施は都市部より遥かに難しいという。

 澎溪河流域における調査により、現地で使用される化学肥料は毎年30万トン、農薬は4000トン以上。水土の流出により河川に流れ込む窒素、燐、カリウムなどの物質は約22.5万トンだということが明らかになっている。

 
(翻訳編集・坂本)

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