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日銀の福井俊彦総裁=写真は、2007年5月10日、東京で(YOSHIKAZU TSUNO/AFP/Getty Images)

くすぶる参院選前の利上げ説、与党からは警戒の声

 福井俊彦総裁ら日銀幹部が追加利上げに関して強気な発言を繰り返していることから、一部の金融市場では参院選前の利上げ前倒し説が再燃している。特に金融政策の影響を受けやすい中短期債は、きょうも利回りが上昇した。

 ただ、仮に消費者物価指数(CPI)がマイナスのまま利上げに踏み切れば、与党から、今後の金融政策のあり方そのものについて議論が高まる可能性は否定できない。金利正常化に向かう日銀が支持率の低下に直面する安倍政権との間合いをどのように取っていくのか、しばらく見定める局面が続きそうだ。

 <外為市場は円上昇を悲観、債券市場は利上げ警戒>

 「4月の全国消費者物価指数(CPI)がマイナスだったため、円買いの材料はほとんどない」。週明け28日の東京外為市場では、朝方から円売りの地合いが続くなか、ある市場参加者はため息混じりにこう漏らした。現在の外為市場は金利相場になっているだけに、円は主要通貨のなかで唯一の「負け組」と揶揄(やゆ)されている。邦銀筋は「円がじりじり売られる展開は夏まで続く」との見立てだ。

 対照的に債券市場では利上げ警戒感がじわじわと広がっている。25日午後の東京円債市場で2年利付国債利回りが一時0.910%に上昇。1997年6月30日以来、約10年ぶりの高水準だ。上昇基調は週明けも弱まらず、28日の取引では0.930%を付けた。

 ドイツ証券・チーフ債券ストラテジスト、森田長太郎氏は、こうした要因について、米国の景気後退観測が弱まっていることを挙げている。加えて、金融政策に関して与党からの政治圧力が以前よりも見られなくなったことを指摘している。

 バークレイズ・キャピタル証券・チーフ円債ストラテジスト、小林益久氏は「世論調査などから参院選の争点は年金問題であり、金融政策のプライオリティは低くならざるを得ない」とし「与党が利上げを阻止しても選挙戦でポイントを稼げない」と指摘する。そのうえで「内閣支持率が下がるにつれ、7月利上げの可能性は高まる」との見方を示している。

 <CPIマイナスでも利上げ、与党から慎重論>

 日銀の水野温氏審議委員は、21日の時事通信とのインタビューで、第3次利上げについて「予断を持っていない」としながらも「経済・物価情勢の展望(展望リポート)の中間評価は一つの区切りでもある」と述べ、早ければ中間評価をまとめる7月11─12日の金融政策決定会合で討議される可能性を示唆した。また、7月の参院選前の利上げについても「政治日程はできるだけ排除して考えたい」とした。

 福井総裁は26日掲載の朝日新聞のインタビューで、当面の金融政策運営について「安定成長と物価の緩やかな上昇が確認できれば、緩やかに金利を上げていく」との従来の主張を繰り返した。また、その際の判断材料として「物価が最重要であることは変わらない」としながら「物価指標だけを見ていては視野が非常に狭くなる。国内の情勢が基本だが対外的な影響も考えないといけない」と付け加えた。さらに「資産価格や為替市場を通じ、国際市場への影響も見ながら金融政策をやっていく」としている。

 こうした日銀幹部の発言は「市場を前のめりにさせているだけで、結局1月ごろの利上げ論議と変わっていない」(邦銀)と受け止めている。

 自民党金融調査会・金融政策小委員会の後藤茂之委員長は23日、時事通信とのインタビューで「利上げを強行するような状況にない」、「参院選の投票が7月22日に行われる見通しで、政府と日銀が一体となって経済政策を進める上で対話が難しい時期にあたる」と語り、7月は時期尚早との見解を示した。

 市場には預金金利の引き上げが選挙対策につながるとの見方がある。しかしある与党幹部は、そのような考えは念頭にないとしたうえで「日銀は0-2%という、ある意味で、物価目標を掲げている以上はそれを守るべきだ」と主張する。与党側は日銀に対して慎重な姿勢を求めている。

 <中川幹事長は金融政策に言及せず、市場は「容認」の憶測>

 自民党は前週末、参院佐賀選挙区の公認候補者の差し替えを決めた。参院佐賀選挙区は1人区で、民主党公認候補は、元日銀調査役。26日に佐賀県内で講演した中川秀直幹事長は、参院選に向け党と県連の結束に関する重要性を強調。ここでも上げ潮政策の推進に絡めた金融政策への批判は聞かれなかったという。

 中川幹事長は今年1月の利上げ論議で、政府に対して日銀法改正を提案するなど、強硬な利上げ反対論を展開した。この時と比べれば、現在は金融政策の議論に距離を置いていると市場ではみられてい。ただ、そうとも言えない、との見方が与党から聞かれる。

 中川幹事長は1月16日の記者会見で「強調したいのは、政府と日銀の景気判断の一体性、経済政策の方向の整合性であって、同時に政府・与党の景気判断は国会に対しても一体的であるべきだ」と述べている。基本的にこの主張は変えていない。

 ある与党幹部は、CPIがマイナスでも利上げに踏み切った場合について「日銀の金融政策の基本スタンスからはずれている」と批判。日銀が利上げを焦るほど、かえって苦しい立場に追い込まれる可能性を指摘している。

 別の自民党関係者は、政府・与党と景気認識を共有できないなら、最終的には金融政策のあり方そのものが議論されるべきとの見方を示している。そのうえで、利上げを強行するのなら、日銀法改正の議論がそ上に上る可能性のあることを「日銀がお望みのこと」と皮肉混じりに表現している。

[東京 28日 ロイター]


 (07/05/29 07:45)  





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