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6月5日、日本銀行の中曽宏金融市場局長はロイターのインタビューで当座預金残高が特定の水準になれば利上げの準備が整うということではないと述べ、当預残の残高とゼロ金利解除は別問題との認識を示した。写真は日銀本店。2000年撮影(2006年 ロイター/Toshiyuki Aizawa)

インタビュー:当預水準と利上げは別問題=日銀局長

日本銀行の中曽宏金融市場局長はロイターのインタビューに応じ、短期金融市場で進めている当座預金残高の圧縮に関連して、当預残が特定の水準になれば利上げの準備が整うということではない、と述べ、当預残の残高とゼロ金利解除は別問題、との認識を示した。

 今後の当預残の圧縮については、金融政策決定会合で決められたディレクティブの「無担保コールレート(オーバーナイト物)をおおむねゼロ%で推移するよう促す」との方針のもと、可能な範囲で引き下げる、との意向を示した。所要準備の6兆円程度よりも上振れた水準になる、との認識もあわせて示した。

 インタビューの詳細は以下の通り。

 ──現在の短期金融市場に対する認識は。

 「徐々に機能の回復、取引の拡大が進んでいる。量的緩和の下では日銀のオペによって大量の資金供給をしていたため市場取引が縮小していたが、解除した後は、市場を通した資金のやり取りが増えてきている。金利形成面でも、経済・物価、政策金利に対する市場の見方を反映して、よりダイナミックに動くようになってきている」

 「先々週から先週、短期市場でレートが幾分上昇したが、国債の発行、税揚げなど資金需給がタイト化する要因が重なった。そうした中で、一時的に資金が上手く循環しなかったためだ。即日オペは、一時的な資金循環が上手くいかなかったことを背景に実施した。当預残が下がってくれば、摩擦的な金利上昇は生じると思っていた。こうした状況を経ながら市場の機能は徐々に回復していくと考えている」

 ──金融調節はどの市場をみて行っているのか。

 「操作目標は無担保コールレートのオーバーナイト物を誘導する、ということだが、その背景に何があるのかを分析して、短期金融市場全般の動きを十分注意深く点検し、判断している」

 「ゼロから0.1%のなかで無担コールレートが変動するような調節運営を心がけている」

 ──当預残はどの程度まで縮減するのか、また、どこまでいったら縮減が終了したことになるのか。

 「当座預金残高削減は、今後も短期市場の動向を注意深く点検しながら進める。当初から、こうした方針に変わりはない。この過程で当預残がある程度変動する可能性はあるだろう。ディレクティブにある『無担保コールレート(オーバーナイト物)を概ねゼロ%で推移するよう促す』との方針のもと、可能な範囲で引き下げる、ということで、あらかじめ特定の水準を念頭に置いているわけではない。どこかの水準まで来たら、削減完了という水準があるかどうかは、やってみないと分からないところがある」

 ──所要準備額約6兆円まで当預を引き下げなくとも、ゼロ金利解除は可能か。

 「所要準備ぎりぎりのところまで落としていく、ということではなく、所要プラスアルファだろう」

 「金融機関の中には、もう少し効率的な資金調達、運用をしようとするところもある。一方で、タイトな状況を経験した後だけに、当面は保守的な金融機関もあり、流動性需要は一様ではなく、市場の動向を見ていかないと分からない。あらかじめ、こうなるとはなかなか言い難い。また、RTGS(即時グロス決済)や郵政公社要因のほか、日々の資金需給もあり、当座預金残高はある程度変動する状況は続く。(当預残の削減の着地点は)もう少し状況をみていかないと分からないところもある」

 「特定の水準にくれば利上げの準備が整う、ということではない」

 ──ゼロ金利解除時期をめぐり、市場の観測が振れ、金利市場もボラタイルになっている。

 「ゼロ金利解除の時期について、ピンポイントで市場の期待が収れんしているわけではない。市場の見方が分かれること、量的緩和の時期に比べて、ある程度、金利のボラティリティが高まるのは不自然なことではない。また、ボラティリティが海外に比べて著しく高いとは思っていない」

 「(ゼロ金利解除については)政策委員会が判断し、決定すること。この点については、政策委員会のメンバーは、繰り返し予断を持たないと述べている。市場に向けて、そういう言葉が発せられている」

 ──短期金融市場の金利機能回復の現状認識と課題は。

 「非常に注意深く見ているところだ。まず、市場参加者の体制整備の問題がある。具体的には、クレジットラインの再構築、資金繰りの精緻(せいち)化、資金や担保を効率的に受け渡しできる事務体制の整備だ。全体的にみると、徐々に対応が進んできている」

 「量的緩和の間に、短期市場を取り巻く環境が大きく変わった。現在の市場環境の中で資金繰りなどの実務を磨いていく必要がある。環境の変化とは、資金の出し手と取り手の参加者の構図が量的緩和前と大きく変わった。現在は大手銀行は出し手であり、また、外銀や証券会社は取り手として比重を高めている。また、RTGSで日中の資金需要が高まっている、ということもある。どの市場で誰を相手に、安定的に運用・調達ができるのか、十分に把握しきれていない。いまはその過程にあり、これがほぐれるにはもう少し時間がかかる」

 「5月下旬に摩擦的に金利上昇がみられた。オペで資金供給を増やし、今は落ち着いている。全体的に市場機能の回復が着実に進んでいる。機能は回復途上だが、課題への取り組みが進めば、さらなる回復が期待できる」

 ──オペの刻みの単位を0.01%に変更することは。

 「金融調節の刻みは現在0.001%だが、この刻みの変更については、もう少し市場の様子をみてみたい」

 ──世界的に市場が大きく動いているが、どのようにみているか。

 「新興国市場の通貨や株式、商品まで含めて、グローバル化が進む中で投資家の資金が広範に市場を越えて動いている。こうした投資家の中にはヘッジファンドや機関投資家も含まれるが、中長期的な経済見通しのほか、短期的な思惑によって行動するところもあり、投資行動は一様ではない。投資姿勢の変化によって、国際的なフローに与える影響をみることが、株価や為替を見るうえでのポイントになる。モニタリングの焦点のひとつにしたい」。(ロイター6月5日=東京)

 (06/06/05 21:12)  





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