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7月20日、バーナンキ米FRB議長が議会証言で先行きの金融政策に関して警戒していたほどタカ派的なトーンを打ち出さなかったことで、世界の金融市場はいったん落ち着きを取り戻した。写真は株価ボードの前を歩く男性(2006年 ロイター/Yuriko Nakao)

FRB議長証言で金融市場落ち着く、波乱の芽は消えず

 バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が議会証言で先行きの金融政策に関して警戒していたほどタカ派的なトーンを打ち出さなかったことで、世界の金融市場はいったん落ち着きを取り戻した。東京株式市場でも朝方から海外勢が買い出動、日経平均は一時400円を超える上昇となった。ただ、米国経済が議長の発言通り軟着陸するかどうかはまだ見極めが必要で、波乱の芽は消えていない。

 <米CPIで高まった警戒感、議長証言で一転>

 19日の米金融市場は先行きの金融政策をめぐって大きく揺れた。朝方に発表された6月の米消費者物価指数(CPI)でコア指数の上昇が前月比0.3%、前年比2.6%と市場の予想を上回り、利上げ観測が広がった。米短期金利先物市場では、18日に68%だった8月の利上げの確率が一気に90%以上に上昇した。

 警戒感が一段と高まる中で迎えたバーナンキ議長の議会証言だったが、発言は6月29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明を基本的に踏襲する内容だった。景気減速によって物価の沈静化が図られる、との見解を示すなど「強いケインジアンの考え」(リーマン・ブラザーズ、チーフ外債ストラテジスト、小林洋史氏)が再度、示された。

 金融市場はこれで落ち着きを取り戻し、8月の利上げの確率は64%に急低下。ニューヨーク株式市場でダウ工業株30種が200ドル超の上昇となったほか、米10年債利回りは5.06%と前日の5.14%から大きく低下した。

 <ファンド勢が動き、アジア株式市場にも波及>

 地政学的なリスクで投機マネーの収縮が続いていたが、この日は「世界のあらゆる市場で資金を運用する米系ファンド勢が動きをみせた」(外資系証券の幹部)という。

 ブラジルレアルやメキシコペソなど中南米の高金利のエマージング通貨が対ドルで上昇したほか、株式もブラジル、メキシコに加え、アルゼンチン、チリ、コロンビアなど軒並み上昇を演じた。

 こうしたリスクテークの動きは東京市場にも引き継がれ、日経平均の大幅高につながった。海外投資家動向をみるうえで参考になる寄り付き前の外資系証券13社経由の注文状況は差し引き1570万株の買い越しと11日ぶりの買いに転じた。「バリュエーション的に割安感が出ていた日本株にも外国人の買いが戻ってきた」(富士投信投資顧問執行役員、岡本佳久氏)という。日本以外でも香港や韓国、シンガポールなどアジア株にも買いの手は広がった。

 <市場は経済指標を点検、議長発言を検証>

 ただ、バーナンキ議長の証言自体は「これまでの発言を繰り返したものであり、米株高・債券高はやや過剰反応」(三菱UFJ証券エコノミスト、福田圭亮氏)と冷静に受け止める向きが多い。

 ドイツ証券チーフ債券ストラテジストの森田長太郎氏は「今後1週間というごく短期でみれば、イベントを前に警戒していたポジションの巻き戻しや材料出尽くしによる新規のポジション構築で米株はある程度堅調に動く」としながら、その後の金融市場の動きは今後出てくる経済指標次第、と指摘している。重要な指標としては28日に第2・四半期の米国内総生産(GDP)速報値、8月4日に7月の米雇用統計を控えている。森田氏は指標が大きく振れなければ8月の利上げの確率は高まり、日米ともに株価の上値追いは難しくなり金利にも上昇圧力がかかると予想。

 逆に指標が下振れすれば利上げ見送りシナリオが強まり、日米の金利は低下するものの、米景気減速懸念から日本の株価にはプラスにはなりにくいと指摘している。バーナンキ議長の発言が今後、指標で裏づけされるのかに市場の関心は移っている、といえる。

 「19日の海外市場は、地政学的リスクに関する新たな材料がない中でバーナンキ証言を受けた動きが市場を主導したが、一日の動きだけで、地政学的リスクをめぐる不透明感が払しょくされ、投資家のリスク志向が本格的に改善したと判断することはできない」(JPモルガン・チェース銀行)との声が現在の市場ムードを端的に表している。

 <物価・金融政策めぐるバーナンキ発言に疑問も>

 一方、今回のバーナンキ証言に関しては、物価と金融政策に関して、ややいぶかしむ声が市場で聞かれた。6月のコアCPI前年比上昇率が2.6%に加速するなど「物価がファンダメンタルズとして上昇基調にある」(クレディ・スイス証券チーフエコノミスト、白川浩道氏)ことに加えて、コアインフレ率見通しを上方修正したにもかかわらず、議長がインフレ警戒姿勢を一段と強めなかった点だ。

 FRBは半期報告で06年のコアPCE価格指数を約2%から2.25−2.50%、07年も1.75−2.00%を2.00−2.25%に改定した。同指数を重視するFRBの容認の上限は2%ということは市場で広く認識されている。

 JPモルガン・チェース銀行では「コアPCE価格指数が2%を上回ることを容認できるということを示唆している可能性がある」と指摘する。その場合、市場が考えてきた前提条件が崩れることになり、追加利上げ観測は急速に後退するが、逆に引き締めが十分に行われずにインフレ期待が高まる事態も考えられる。

 リーマン・ブラザーズの小林氏は「最悪のシナリオはFRBがビハインドザカーブに陥り、金利がベアスティープすることだ」と警告。「利上げを5.5%で停止するとしたら、バーナンキ議長は強いハト派といえる」と話している。

 [ロイター7月20日=東京]

 (06/07/20 15:22)  





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