印刷版   

胡耀邦氏をどのように記念するか、中国当局にとって非常に敏感な問題である。写真は、1989年4月15日の胡氏の死去を悼んで、学生や民衆が天安門広場で行った追悼活動。これが、同年6月4日の天安門事件のきっかけとなった(Getty Images)

天安門事件前の胡耀邦記念 「人民日報」、温家宝総理の異例の追悼文を発表

 【大紀元日本4月17日】4月15日は、89年の学生民主運動のきっかけとなった胡耀邦前総書記の21回目の命日。中国共産党機関誌『人民日報』は2面トップ記事として、温家宝総理が胡耀邦氏を追悼する文「興義に再来し、耀邦を追憶」を発表した。89年4月、重病中の胡耀邦氏にずっと付き添った日々を追憶、胡氏の教えから責任を怠ることができないと感じている心境を語る温家宝総理の異例の文章の発表は、きわめて異例なことと見なされ、各大手サイトは大々的に本文を転載している。

 胡耀邦前総書記は中国の改革開放が始まって以来、多くの冤罪を晴らした最初の人物である。1987年、自由化と責任を咎められ失脚し、89年に逝去したことが、89年6月4日の天安門事件を引き起こしたきっかけとなった。中共の内部で、胡耀邦氏は常に争議の多い人物とされているだけに、温総理が『人民日報』で本文を発表したことは、さまざまな憶測を呼んでいる。

 ネットユーザーたちは賛成の声

 本文の中で、温総理はかつて胡氏とともに西南貧困地区を視察した情景を思い出し、胡氏の素朴な人柄、国民への思いやりなどが自身に大きな影響を与えたと言及している。

 この文を読んだあるネットユーザーは「職位の高低は別に、人間としては好い人にならなければならない。家宝総理、お大事に」とエールを送った。

 中共歴代の指導者たちが前指導者についての言及を恐れたり、将来の指導者を抑えたりなどすることを批判し、温総理を「勇気がある」と絶賛するネットユーザーもいる。

 六四事件記念日を意識する信号?

 また、温総理の文章発表を「ひとつの信号であり、前奏であり、伏線なのだ」と指摘する人もいる。

 胡耀邦氏が亡くなって21年になる。これまで親族や元部下たちの追悼文がときおり見られるが、いずれも『炎黄春秋』などのような改革派と見られる内部の刊行物に掲載されるだけで、現指導者が『人民日報』で胡耀邦氏を追懐し絶賛する文を発表したのは、今回が初めてである。専門家は、この文章は中共の指導部で回覧され、かつ胡錦涛国家主席も認めている可能性が高いとしている。

 この異例な事に対し、北京にいるベテラン独立派記者・高瑜氏は胡耀邦氏の名誉を回復するための伏線ではないとの見解を示した。「胡耀邦氏の名誉回復につながるものとは思われない。なぜなら、胡耀邦氏は天安門事件と関係しているからだ」

 高瑜氏は、中国共産党は胡耀邦氏打倒のような誤りを犯しても、その責任を追及することは考えられないと指摘している。「胡耀邦氏を褒めたことはいいことだが、それにもかかわらず、胡耀邦氏の名誉回復はしない。そうすれば、この文章は結局自画自賛にすぎない」

 北京在住のある独立派の政治評論家は、胡耀邦氏を公に記念することは、彼の声望を借りて現在激化している官民対立を緩和する目的で、6月4日の天安門事件21周年を前に発生しうる事態をコントロールし、誘導する狙いだという。

 香港誌『開放』編集長・金鐘氏は、中国共産党は毎年六四天安門事件の前に、国内矛盾の激化による大爆発をきわめて恐れていると指摘。胡耀邦氏の逝去が天安門事件につながった原因であり、本文発表のねらいは、天安門事件記念日に起こりうる事態を制御するために打った先手だと考える。「当局は先にこの事に言及し、若者たちを導くのがねらいだろう。つまり、主導権をとり、起こりうる事態を未然に防ぐというわけだ」

 政治的な支持を求めるサイン

 雑誌『動向』の編集長・張偉国氏は、「今の温家宝総理はすこし好ましくない境遇に陥っている。よって、彼は政治的な支持を得て、自分の不安定な政治地位を固めようとしているのだ。これが一点。もう一つは、中国では官僚と国民との衝突がますます激しくなっているので、胡耀邦氏でもって中共の恥を隠そうとしているわけだ」

 広州の独立作家・寥祖笙氏は温総理の文について、他の指導者より温総理は人間味があり温情的な一面がある一方、やましさを感じているような内容が見られないのは遺憾だと指摘している。

 「もし、胡耀邦氏が生きていたなら、国民たちをこれほど苦しめさせているだろうか。冤罪を被りながら訴えるところもなく北京で凍え死ぬ人たちを見て見ぬふりをするだろうか。ありえないだろう。胡耀邦氏はかつて、文芸界に今後筆禍事件は起こらないと保証したが、今でも筆禍事件は相次ぎ、文字の獄によって、家を失い命を無くしたり、拷問を受けたりする人は少なくない。たとえば、言論により罪を問われた胡佳氏も、重病にかかっていても釈放して看病を受けさせてもらえないのだ。中国共産党は彼を監獄で死なせるつもりなのか。このようなことを考えると、胡錦涛主席と温家宝総理はやましさを感じるべきではないだろうか」

(翻訳編集・小林)


 (10/04/17 08:28)  





■キーワード
天安門事件  胡耀邦  官民対立  温家宝  


■関連文章
  • <両会観察>不動産価格が急上昇 温首相「断固食い止める」の決心(10/03/08)
  • 胡主席の「つぶやき」、投稿ないまま削除 真相は?(10/02/28)
  • 抗議を打ち切り、成田空港に寝泊りの中国人権活動家 旧正月に帰国可能か(10/02/02)
  • 『趙紫陽の軟禁中の談話』著者、北京で死去(10/01/15)
  • テレサ・テン 「もっとも影響力のある文化人」と「天安門事件」(09/12/22)
  • 流行語で読み取る激変の中国(12)(09/11/17)
  • ベストセラー『上海の長い夜』の著者・鄭念氏を偲ぶ(09/11/15)
  • 香港民主運動メンバー、北京空港で強制送還(09/10/31)
  • 中国、イランとの友好関係強調 国連制裁が難航に(09/10/22)
  • <中共政権樹立60周年> 言動制限を強化、僧侶も対象へ(09/09/26)
  • <政権樹立60周年>教授の解放を求め、北京大学学生らが抗議デモ(09/09/21)
  • 「天安門事件」名誉回復を求める軍部からの手紙、政府系サイトで一時掲載=中国(09/09/15)
  • テレサ・テン、最も影響力のある文化人に=中国(09/09/08)
  • 「六四天安門事件」、真実の写真がネットで大反響=中国(09/09/04)
  • 四川大地震の校舎建築欠陥を追及した作家、逮捕起訴される(09/08/08)