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8月25日、小泉首相の後継として最有力視されている安倍官房長官(写真)が実際に政権に就いた場合、海外投資家は経済閣僚・党役員をはじめとする人事でまず安倍氏の手腕を見極めようとしている。22日撮影(2006年 ロイター/Toshiyuki Aizawa)

ポスト小泉特集:海外投資家は人事で安倍氏の手腕を見極め

 小泉首相の後継として最有力視されている安倍官房長官が実際に政権に就いた場合、海外投資家は、経済閣僚・党役員をはじめとする人事でまず、安倍氏の手腕を見極めようとしている。小泉首相に比べてリーダーシップの面で見劣りするとの見方が多く、自民党守旧派の抵抗をどう抑え込み、小泉首相が進めてきた改革路線をどのような形で継承するのかを占う試金石になるからだ。

 9月20日の自民党総裁選挙・9月末の国会での首相指名選挙を前に、安倍官房長官がすでに小泉首相の後任として金融市場で認知されていることを受け、ロイターは「海外勢は新政権をどうみるか」と題し海外投資家と日常的に接している市場参加者5人にインタビューした。

 <人事で手腕を見極め>

 国内での安倍人気とは対照的に「安倍新政権に何を期待するかという以前に、安倍氏は海外勢の間での認知度が低い」(21世紀アセットマネジメントの代表取締役社長、清水孝則氏)といい、海外投資家の間ではいまだに安倍氏に対する見方は定まっていない。

 カリヨン証券チーフ・エコノミストの加藤進氏は「海外勢は安倍氏について関心はあるがよく知らないというのが実情」としたえうで「安倍政権を前提にストラテジーをたてるにいたっていない」と指摘する。

 安倍氏は9月1日に正式に出馬表明する予定。当初は若手・中堅の派閥横断的な議員でつくる「再チャレンジ支援議員連盟」が安倍氏を次期首相候補として表立って支援してきたが、福田元官房長官が不出馬を表明した後からは、ベテラン議員を含めて安倍氏支持が党内で急速に広がりを見せた。それが逆に小泉改革継承の顔としての印象を薄めてしまっている。

 このためまず、人事で安倍氏の考えや手腕をみたい、との意向が強い。

 クレディスイス証券・チーフエコノミストの白川浩道氏は「小泉首相は人事に関してエキセントリックだった。安倍氏はそういう意味では保守的な政治家と妥協しないと首相にはなれないため、年配の人が入ることも想定される」とし「へたをすれば海外勢はマイナスに反応するかもしれない」と警告する。

 <外交に比重をかけた政権>

 人事で結果的に派閥均衡が図られた場合、その後の政策の立案・遂行にも影響が出る、と解釈される可能性がある。UBSグローバル・アセット・マネジメントの植木秀郎取締役は「安倍氏に対する懸念は実行力。守旧派の巻き返し的な動きにどのように対応するかだ。政策に邪魔が入らないことが重要」と説く。

 金融機関の不良債権問題など小泉首相が就任した2001年に比べて経済情勢は全く異なるため、政権の政策課題に関しては、外交への注目度が高い。カリヨン証券の加藤氏は「対アジア外交がうまくいかず政権が不安定になるようなら、日本経済にもリスクが出てくる」と指摘。「アジア系の投資家は靖国問題を重く受け止める傾向がある」と述べる。

 メリルリンチ日本証券・チーフエコノミストのイェスパー・コール氏は「日本経済は危機状態から普通になった。安倍政権の政策プライオリティーは外交と教育、社会問題」としたうえで「経済全体にとっては、教育や社会問題対策はもちろん大事だが、金融の世界にいるわれわれにとっては全くエロチックでなく面白くない」とする。

 クレディスイスの白川氏は「エネルギーへのコストを払うことが景気の足かせになっている。エネルギーの安定確保・供給と絡めて、外交政策を行うべき」と主張する。

 <選別色強まる投資行動>

 海外投資家がおぼろげながら安倍政権に対して前向きに評価していることもあり、海外勢の日本への資金流入の傾向は続くとの見方が多いが、選別色はより強まる、との見方が出ている。

 メリルリンチのコール氏は、政権交代後は全体を買うのではなく、個別をより重視していく姿勢だ。同氏は「ポスト小泉はマクロではなくミクロ。システムは大丈夫だが、A銀行の経営戦略はB銀行と比べてどこに違いがあるのか、どちらが株主に対していい戦略をとるのかなど、ミクロを判断することになる」とみている。

 クレディスイスの白川氏は「安倍政権は右傾化する可能性が高く、防衛予算が増えるかもしれないので、防衛産業関連株などが良いのではないか。また、日銀は淡々と利上げを行うと予想しており、円高メリットのある業種も良いと思う。金利上昇に加え、地銀再編を進めるとみており、銀行株なども良いだろう」と指摘する。

 同時にこうした見方は安倍氏が市場の期待に応える形で政権運営をすることが前提なだけに、党内の調整にこだわるあまり改革の後退と受け止められるような姿勢をみせた場合、資金引き揚げのリスクを抱えているともいえる。


[ロイター25日=東京]

 (06/08/28 07:00)  





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