THE EPOCH TIMES

焦点:北朝鮮の金正恩氏、「狂気」の裏に潜むしたたかな計算

2017年12月07日 12時00分

正恩氏がまず最初に変えたのは軍事戦略だった。父親は、支援を得るための交渉の切り札として核軍縮の約束を使ったが、正恩氏も2012年2月、それを踏襲し、米国からの食糧支援と引き換えに自国の核プログラムを凍結すると約束した。

しかしそれから数週間後、同氏は方針転換し、北朝鮮が長距離ミサイル実験を実施することを明らかにした。「交渉は金正日氏の遺産として継続されていた」。2012年2月の合意に寄与した前年の6カ国協議で韓国代表を務めた魏聖洛氏はこう語る。

「これ以来、彼の戦略的な考えが出来上がっていった」

正恩氏は、イラクのフセイン元大統領やリビアの元最高指導者カダフィ大佐が弱体化して破滅したのは、核兵器を保有していなかったせいだと考えている。北朝鮮メディアはそう伝えている。

「強力な核抑止力は、外国からの攻撃を阻止するのに最大の力を発揮する宝刀であることを、歴史は証明している」と、国営の朝鮮中央通信社(KCNA)は2016年1月、論説でこう述べている。

北朝鮮が核抑止力の保有に向かってひたすら走り続けているのは、同国が脅威を感じており、正恩氏がカダフィ大佐のような運命に直面するかもしれないことをことさら危惧しているからだ。カダフィ大佐は2003年、大量破壊兵器の放棄に同意し、2011年に米国とその同盟諸国が支援する反政府勢力によって殺害された。

正恩氏が指導者となって数カ月後、北朝鮮は憲法を改正し、核保有国と明記した。

正日氏の葬儀で棺をかついだ主要人物の1人、朝鮮人民軍の李英鎬(リ・ヨンホ)総参謀長は2012年7月、正恩氏によって解任された。韓国の情報当局はのちに、李氏が処刑されていたことを確認している。

北朝鮮は2012年12月までに、別のミサイル発射実験を成功させている。

2013年、正恩氏は核兵器開発と経済成長を平行して進める「並進路線」という新しい政策を打ち出した。

この政策には核抑止力が不可欠だと、2016年に韓国に亡命した太永浩(テ・ヨンホ)前駐英公使は指摘。完全破壊という脅威は、核爆弾を「貧者の兵器」にさせ、それにより自国支配を強化し、長期支配が確保されると太氏は語る。

「使用可能な核兵器を手に入れたら、彼(正恩氏)はもっと柔軟にリソースを配置し、民間の建設事業にも軍を送り込む余地が生まれる」

<愚かな夢>

北朝鮮は国内総生産(GDP)の約4分の1を防衛費に充てている。正恩氏は核プログラムを放棄するより、国民に「草を食べさせる」だろうと、ロシアのプーチン大統領は語っている。

その一方で、飢きんに見舞われた教訓から、国民の繁栄を促進したいとも正恩氏は語っている。

元専属料理人の藤本氏は、2000年にスイスの学校から夏休みで帰国した際、正恩氏は父親の北京訪問に夢中だったと話す。

「話をしよう」と、未来の指導者である正恩氏が父親の専用列車で酒を飲みながら、こう切り出したことを藤本氏は思い出す。「上から聞いた話だが、中国はエンジニアリングや商業、ホテル、農業などあらゆる面で成功を収めているようだ。多くの点で、手本とすべきではないか」と正恩氏は語ったという。

2012年、政権の座に就いてから間もなくして、正恩氏は中国が1980年代に行った改革を真似し始めた。農家は収穫物の大半を手にすることが許された。国営企業は市場価格で売買したり、労働者を雇用・解雇したりする権利が与えられた。民間の起業家やトレーダーは国家プロジェクトに党や軍の機関などと共に参入することを奨励された。同氏はまた、父親が封じ込めることができなかった非公式市場に目をつぶるようになった。

同年4月、正恩氏は国民に向け演説した。北朝鮮国民が指導者の声を聞いたのは17年ぶりのことだった。「国民が二度と生活を切り詰めることがないようにすることが、党の確たる決意である」と同氏は述べた。

ただし、経済的自由が自身の追い落としにつながらないよう、同氏は細心の注意を払っていた。

2011年の正日氏の葬儀に付き添っていた幹部のなかには、改革を率いていた張成沢(チャン・ソンテク)氏もいた。張氏は正日氏の妹と結婚し、中国との窓口となり、数ある新経済特区を監督していた。

張氏は2013年12月、カメラの前で党中央委員会政治局から外され、クーデターを企てたとして糾弾された。「そのような愚かな夢を夢見ていた」と国営メディアは伝え、改革派としての自身の計画が諸外国によって認められることを期待していた、と付け加えた。

NISによると、張氏は高射砲によって「何十回」も撃たれ、同氏の遺体は火炎放射器で始末されたというが、確認することはできない。

<開発独裁者>

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