モルガンスタンレー証券ストラテジストの神山直樹氏はロイターとのインタビューで、投資家が再び日本株買いに戻るには、企業業績の上方修正がきっかけになるとみており、現行水準は下落幅の大きかった銘柄のリバーサル効果を狙う好機との見方を示した。
さらに、株式市場は、小泉首相の後任や村上ファンドへの資金拠出で進退が注目される日銀の福井総裁の問題に大きく影響を受けるとは考えにくいと指摘した。
主なインタビューの内容は以下の通り。
──外国人を含む投資家は、どのようなタイミングで日本株マーケットに戻ってくるとみるか。
「中間期決算が発表され、06年度の通期業績予想が上方修正される時期だろう。米国が利上げを続け、日本でもいずれ金利引き上げがあるとの思惑から、過剰流動性の減少に対する懸念は浮上しているが、懸念は懸念にとどまるだろう。経済のファンダメンタルズが悪化しているということではない」
──日銀の福井総裁をめぐる進退問題は株式市場にどう影響するか。
「ファンダメンタルには大した問題にはならないだろう。仮に福井総裁が辞任したら、後任が市場から信頼されるかなどの問題はあるものの、それは米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長の就任時と同じだと思う。新しい総裁にはだれがなっても、信認やコミュニケーションリスクはともなうもので、大きな問題にはならないのではないか。ハウスビューとしては日本での金利引き上げは今年7月と07年4月に0.25%ずつの利上げがあると予想している」
──9月に任期が切れる小泉首相の後任問題が株式市場に与える影響は。
「2003年に竹中金融担当相(当時)が金融行政の政策転換を図った時は大きなインパクトだったが、今回はそれに比べると影響は少ないと思う。株式市場や企業収益からみて政治の重要性は上がったり下がったりするものだが、今は比較的低い時期だと思う。仮に選択肢が安倍官房長官と福田元官房長官しかいないと考えた場合、長期的には後任は安倍氏の方がより良いと予想する。これまでの改革を推進、実現できるキャラクターは安倍氏であると見ているためだ」
──外国人投資家も同じように考えているのか。
「福田氏もリフォーマーであることは確かなので、改革路線の後退につながると考える向きは少ないだろうが、安倍氏が後任になればポジティブだとみているのではないか」
──2007年はどうか。
「モルガンでは企業の2006年度の経常増益率を17%と予想しているが、07年度は10%に下がると予想し、モメンタムはダウンとみている。その他にも円高圧力が高まることが予想される。日本の金利は上がり続けるという予想は続く一方、米国の金利は上がらないという予想が続くため、金利格差は縮小していく環境になる。このため円高圧力は強くなる。この懸念が来年浮上することになるだろう」
「こうした環境のもとで、マージンが悪化する企業が増えれば利益のモメンタムも悪化し、PERは現行の18倍から16倍程度に低下すると予想。まだ年末の株価がどの水準で着地するか分らないため確実なことは言えないが、07年は東証株価指数(TOPIX)の推移は1700─1750のフェアバリューのレンジ内におさまるのではないか。だからこそ今のタイミングがバリュエーションからみて、デフレ脱却時の買い場をつかむ最後のチャンスだとみている。この水準まで調整した相場では、下落幅の大きかった銘柄のリバーサル効果を狙う好機だろう。今年10―11月には1750―1800ポイントまでオーバーシュートする可能性もあるとの考えを変えていない」
(ロイター6月28日=東京)
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