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「暴動」ではない!

文・梅香居士

 【大紀元日本3月19日】チベットがまた発火した。

 悲しむべきことに、その犠牲者は少なくないらしい。らしい、と言わねばならないのは、その実像がまだ見えないからだ。

 各種報道によると3月18日現在、事件の中心ラサでの死亡者数は、中国当局発表の数字が「13人」、チベット亡命政府発表の数字が「少なくとも80人以上」であるという。

 現地での自由報道を許さないのは中共の常であるから今さら驚きはしない。

 しかし聞き捨てならないのは、その「13人」の犠牲者とは、鎮圧部隊にではなくチベット人の「暴徒」によって殺されたものだ、というのである。

 大紀元社説『九評共産党』によれば、中共の悪魔的本質は「嘘と暴力」に象徴されるという。それを知っていてもなお唖然としてしまうのだが、中共という集団はどうしてこうもずうずうしく、誰が聞いても信じないようなウソを平気でつけるのか。

 1989年に起きた六四天安門事件の犠牲者数も、中国側スポークスマンによる最初の会見は「死亡者は一人もいない」から始まった。口角に笑みを含みながら述べていたその顔を、嘔吐感とともに今思い出す。

 「六四」のときも、中国当局がとった強硬手段の大義名分は「暴徒鎮圧」であった。

 その建前は現在でも変わっていない。「暴徒」を制するためならば、どんな手段でも正当化してしまうところに中共の恐ろしさがある。

 「六四」のとき、確かに一部の市民が激化して兵士を殺し、その死体を崇文門の陸橋から吊るすという惨劇が起きた。事実としてそのような異常な現象もあったことは認めよう。

 しかし、そもそも何が原因で「六四」に突っ込んでしまったのか。

 80年代後半、改革開放政策によって中国経済は確かに上昇していた。一方、官僚を中心とする上級層の不正・腐敗は当時から凄まじく、民衆はそのことに巨大なストレスを感じていた。

 よく「六四」を称して「民主化要求運動」と言われるが、実際のところは、西側諸国のような民主主義制度の導入を短急に求めたのではなく、官僚の不正・腐敗という実際問題に対する民衆の「抗議活動」だったのである。

 民衆の「抗議」だとすれば、そこにある要因まで見なければ公平性を欠く。

 いま中国全土おいて年間数万件は発生しているとされる「暴動」も、実は中国当局側に民衆の怒りを買う要因があっての「抗議活動」である場合がほとんどなのである。

 その要因とは、土地家屋の強制収奪であったり、女子への性犯罪であったりと様々であるが、いずれにせよ権力側によって常態化している非道に対して、何かのきっかけによって民衆の怒りが爆発したものであることは疑いない。

 だとすれば、である。その一部や表面的な現象だけをとらえて軽々に「暴動」と呼ぶことは、ジャーナリズムとして厳に慎むべきであろう。中国報道については、特にそのことを肝に銘じなければならない。

 このように初歩的な指摘をせざるを得ないのは、この度の一連のチベット報道を見ていても、それを単純な「暴動」扱いしている日本のメディアがあまりにも多いからである。

 さらには、テレビのニュース報道の最後に「事態の一日も早い鎮静化が望まれます」などと軽率なコメントをするキャスターがいることも、まったく見るに耐えない。

 現状において表面的に鎮静化するということは、中共側が武力でチベット人を押さえつけることを指す。その後も、中共支配のもとで、漢族がチベット人より優位に立つ社会構造は変わらないのである。

 「暴動」だから鎮圧するのは「正当」なのだ、という中共の暴論に知らずして加担しているとすれば、日本のマスコミはあまりにも無知だと言わざるを得ないだろう。

 そもそも1950年代に中共軍がチベットを侵略し数百万のチベット人が殺害された、という「そもそも論」から出発しなくては、チベット問題を報道する資格はない。

 ちなみに先に述べたチベット亡命政府は、中共の侵略から1979年までだけでも、少なくとも120万人のチベット人が殺害されたと発表している。

 その「少なくとも120万人」という数字は、現在、北インドのダラムサラにあるチベット亡命政府が、ヒマラヤを越えて逃げてきた多数のチベット人から綿密な聞き取り調査をおこなって推計した数字であるという。79年以降の被害も含めれば、さらに犠牲者数は増大するであろう。いずれにせよ、中共の発表する「数字」よりは、はるかに客観性があって信ずるに足る。

 そのとき、チベット仏教の寺院・墳墓などの宗教施設もことごとく破壊された。

 ダライラマ14世が「文化的虐殺だ」と非難したのは一昨日だが、その言葉は、58年前からの中共の悪行をすべて指している。

 先日来、中共の宣伝塔であるCCTV(中央電視台)が世界に配信した画像では、なるほど確かに僧衣をまとった人物までが商店のシャッターを足蹴にしている場面が映っていて、なんとも悲しい。商店はおそらく漢族のものであろうか。ラサの民衆が激昂していたことはその表情からも伺われる。

 その一方、中国当局による民衆鎮圧の場面は一切出されていない。

 中共が情報操作していることは疑いないが、それが明白であるにもかかわらずウソを真と言い張る中国共産党の鉄面皮には、いずれ天罰を下す必要があろう。

 ただその前に、日本のマスコミ各位に少々苦言を呈したいと思う。

 「暴動」などと報道して中共を喜ばせる愚行はもう止めよ。

 報道の自由を有する国のメディアたるものならば、中国の真相を見抜く眼力をもたねばならない。本来、信仰心の篤い温厚なチベット人でさえ、中共の圧政にはもはや耐え難いからこそ起きたこの度の悲劇ではないか。

 繰り返すが、邪悪のものに加担などしたらジャーナリズムは終わりである。

 今や世界各地では、中国共産党の邪悪に対して、正義と良知の人々が続々と立ち上がっているではないか。

 中共からの3300万人脱党、人権聖火、グローバル100万人署名運動、良識ある一流選手の北京五輪辞退、そして神韻芸術祭。

 今まさに報道すべき人類の善は、いくらでもある。

 (08/03/19 23:50)  





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