【医学古今】 秋の風邪に漢方医学

2013年10月08日 07時00分

【大紀元日本10月8日】風邪なら葛根湯と思っている方は多いと思います。しかし、これは漢方医学の考え方ではありません。漢方医学で風邪を治療する場合、少なくとも季節の要素、体質の要素及び邪気の性質を合わせて考えなければなりません。

風邪はさまざまな種類(普通は証と言う)に分けられ、治療する場合、それに合わせて薬を選ばなければなりません。決して葛根湯一つで対応できるわけではありません。

季節の要素からだけ考えても、春には風気が多い、夏には暑気が多い、長夏(夏の後半1カ月)には湿気が多い、秋には燥気が多い、冬には寒気が多い。そこで、それぞれの季節の気によって風邪が起きた場合、その要素を十分に配慮して風邪薬を選択しなければなりません。

また、各季節に対応している臓腑も違います。春には肝臓、夏には心臓、長夏には脾臓、秋には肺臓、冬には腎臓なので、各季節の風邪を治療する場合、その季節に対応する臓器の機能状況に配慮する必要があります。

例えば、秋の風邪を治療する場合に、燥気と肺臓の機能状況を十分に配慮して投薬する必要があります。燥気は邪気として病気を起こすと、燥邪と呼ばれます。燥邪は粘膜乾燥を起こしやすいので、秋の風邪は口や咽喉の乾き、痰が少なく出しにくい傾向があり、多くの場合、潤燥化痰の薬を使用する必要があります。

ただし、同じ燥邪であっても、秋の前半には、夏の暑気がまだ少し残っているから、燥気と暑気が合わさって、温燥の邪気が生じやすいため、燥邪を治療すると同時に、温邪にも対応しなければなりません。このような温燥によって起きた風邪に対する治療薬として、桑杏湯(そうきょうとう)という代表的な処方があります。

一方、秋の後半には冬の寒気が近づいてくるから、燥気と寒気が合わさって、涼燥の邪気を生じやすいため、燥邪を治療すると同時に、寒邪にも対応しなければなりません。このような涼燥によって起きた風邪に対する治療薬として、杏蘇散(きょうそさん)という代表的な処方があります。

桑杏湯と杏蘇散はいずれも健康保険に適用されていない処方なので、薬局から自費で購入することはできますが、実際病院で処方する際には、温燥の風邪に対して麻杏甘石湯や滋陰至宝湯など、涼燥の風邪に対して参蘇飲や香蘇散、麦門冬湯などの処方で代用する場合が多いです。

鍼灸治療をする場合、やはり温燥か涼燥かをしっかり判断して治療する必要があります。温燥の場合には尺沢(しゃくたく)や魚際(ぎょさい)で熱を下げ、涼燥の場合には、風門、肺兪(はいゆ)を温灸して寒邪を追い出す必要があります。

こう見れば、漢方医学の治療法はずいぶん複雑です。細かく患者さんに対応できるようになるには、相当の知識と経験を積まなければなりません。漢方医の場合、年を取れば取るほど人気が高くなるのは、これも原因です。
 

(漢方医師・甄 立学)

 

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