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中国経済の現状と展望 その八

 【大紀元日本4月26日】この10年間、中国の最終消費率(国内総生産に占める消費総額の割合)は平均58.5%と、発展途上国の平均を20%も下回る低水準となっており、昨年上半期には過去30年で最低の55.4%に落ち込んだ。中国信息(情報)中心経済予測部の祝宝良・首席エコノミストは、このような消費率の低下を「中国経済の成長における重大な問題」と指摘する。

  国家発展・改革委員会価格観測中心の徐連仲氏は、消費低迷の原因は一般市民の所得が伸び悩んでいる点にあると分析。1997年以降の所得の伸びは、「改革・開放はじまって以来の現象」(徐氏)という低水準で推移を続けている。最低限の衣・食への支出のほか、収入の大部分は住宅などの購入に当てられ、残りは養老保険、医療保険などで消えてしまい、一般消費に当てられる額は極めて少ないというのが現状のようである。徐氏は「国の社会保障体制に問題がある」とした上で、公平な収入分配などを実現する必要があると指摘する。

 公共投資の悪用

 こうした内需低迷の中、中共は公共事業に期待し、公共事業への投資は毎年増えている。しかし、こうした公共事業の限界および非効率的な実態が明らかになってきた。一部の地域の町や村では、登録車数が数百台にもかかわらず、六車線もの道路が建設され、役場の建物は、上海、北京の役所に匹敵するほど立派であるが、町村民の生活は悲惨な状況にある。最近、マカオに近い広東省の珠海市には国際空港が建設された。しかし、珠海の周辺には、すでに香港に2つの空港があるほか、深セン、広州の2つを合せて4つとなり、この狭い地域には十分にもかかわらず、珠海政府は反対を無視し莫大な税金を投入した。運営状況を見ると、国際便どころか、国内便も極めて少ない。空港自体の運営も赤字であり、運営していけば借金はどんどん増えていく。

 こうしたケースは中国ではよく見られることである。中国の人々はこれを「業績プロジェクト」と呼んでいる。官僚の業績を評価する目安は中央の指示に従うことであり、外資誘致の成果はとても重視されている。中央政府は外資を誘致するためには、様々な優遇措置を出したほか、良い投資環境を見せることもする。そのために街作りは優先されている。もちろん経済発展のためのインフラ整備はとても重要なことで、投資しなければならないことである。しかし、そのために、国民の教育、社会保障に負担をかける必要はない。むしろ、後者のことはもっと重要なことであり、長期発展の原動力である。中共政権のやり方はある意味で「卵を取るために、鶏を殺す」という極端な政策を取ってきた。

 89年から、中共の宣伝部は中国全土のマスコミ、メディアの報道、言論において厳しく管理している。各マスコミ機関に「良い投資環境雰囲気を作るのはマスコミの役割であり、マイナス報道は控えめに、重大事故、共産党政権の安定に関わる報道は審査が必要」と完全にあらゆる情報をコントロールしている。こうした圧力の下で、中国大陸の社会、経済学者は厳しい状況に置かれ、生きるために中共の道具となってしまう人は少なくない。海外に出ていく学者も少なくはないが、大陸に親戚、家族がいるため、言論を控える。一方、地方政府の官僚は地位を守るために当然中央の指示に従う。その結果、投資資金の回収ができるか否かを問わず、無駄な公共投資を行っている。それに伴う深刻な環境破壊、腐敗、社会倫理や道徳の喪失は全国に広がっている。ある大陸の経済学者は「現在の経済発展における表面的な繁栄は、我々子孫の生き残りの環境と中華民族の道徳を完全に破壊した代償である」と述べている。

 進退きわまる不動産開発

 公共事業の相乗効果への期待が外れた中、90年代末、中共政権は国内需要を活性化するため、不動産開発に賭けた。開発を行う過程で、行政と不動産開発が結託、僅かな補償金を提供するだけで、強制的に住民を退去させるため、住民の反発による抗議行動が頻繁に見られている。各地の住民と地方政府との衝突事件は相次いでいる。毎日、数多くの直訴者が北京の中南海に殺到し、中共にとっては緊迫の日々となっている。

 実際にこの不動産開発はバブルがはじける寸前に来ている。中共政権も認めている。最近の上海をはじめ各地の不動産価格の下落は、金融危機を招く恐れがあると有識者は指摘している。不動産開発の資金は100%銀行からの融資であるため、不動産価格が10%下落すると、不動産融資への不良債権がほぼ同じペースで増えていくことになる。中央銀行は不動産のバブルを抑えていきたいが、一方では不動産価格の下落による不良債権の増加を懸念している。現在、中国の銀行の主な利益の大半が、不動産への融資によるものである。また、地方政府の財政歳入の中で、土地の賃貸料、不動産関連の税収は年々増え、地方財政の主な収入源となっている。バブルがはじけると、地方および中央政府の財政崩壊、金融危機を招く結果に繋がる。過去一年間、上海の不動産価格は30%下落した。このことによって上海市政府の財政はかなり苦しい状況にある。そのため、上海市政府は温家宝首相のマクロ調整政策に強く反発している。しかし、内需低迷が続くと、不動産価格の下落は避けられないことであり、少なくともバブル最盛期の40%までは、下がるだろうと専門家は予想している。

 制度的な限界に達した

 このようなことは決して地域や個別的な問題ではなく、中央から地方まで至る所に存在するものである。なぜ、こうしたことが続くかというと、天安事件後、中共政権による経済政策の限界があるからである。天安事件後、中共政権は専制政権をより強化しはじめ、経済発展に関する環境、制度の改革は一向に進んでいない。経済学においては、発展途上国は先進国の発展経験を取り入れることによって、効率良い発展を遂げることができる。それには制度と技術2つの成功経験が含まれている。技術を取り入れることは初期段階において効果が現れ、長期的な発展のためには制度改革を進めなければならない。そうしなければ、技術、ノウハウの吸収に支障が生じ、結局行き詰まりとなるケースが多い。

 一方、先進国経済発展の制度を取入れ、改革を先行しながら、技術、ノウハウを吸収するのも一つの選択である。しかし、制度面の改革は利益の既得者の抵抗があるため、初期段階では進めにくいが、これを乗り越えたならば、スムーズに技術、ノウハウが吸収され、発展の軌道に乗っていく。しかし、とても残念なことに、天安門事件後、中共政権は迷うことなく前者を選択した。中共政権の経済政策の下、経済格差はどんどん拡大していき、様々な社会問題が爆発寸前となり、去年一年間における抗議件数は数え知れず、政府間との衝突は数万件に上る。ここで、抜本的な政治体制の改革がない限り、2、3年後には行き詰まりとなることが断言できる。しかし、中共政権50年間の歴史を検証してみると、中共政権自らの改革は、ほぼゼロであると言えると思う。中国の未来は、中国国民が中共政権を徹底的に否定し、中共政権50年間の歴史を反省すると同時に、人間性、民主、自由を尊重する自覚が必要である。「共産党についての九つの論評」による共産党から自発的に脱退する運動は、中国国民の自覚そのものである。その意味で生まれ変わる中国が期待できる。

 完

 (06/04/26 08:17)  





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